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日本海事センターがLNG海上輸送動向を公表

LNG海上輸送で「長期案件の積み増し重要」

2015年6月9日 (火)

調査・データ日本海事センターは8日、LNG海上輸送の動向をまとめたと発表した。各種統計を基に、LNG貿易の動向やLNG船市況、日本のLNG船隊の動向など、基礎的な情報を紹介するとともに、主要国の輸出プロジェクト動向など、今後の展望を考察した。

まとめによると、LNG輸送の動向は天然ガスは石油や石炭と比べて燃焼時の環境負荷が低く、埋蔵量も豊富であることから、「新興国を中心に需要は堅調に伸びる」と予測。天然ガス需要の年平均増加率として「2%前後で推移する」との見方が多いことを紹介した。

2013年のLNG貿易量は2.4億トンで天然ガス貿易量の3割、同消費量の1割となったが、過去10年間のLNG貿易量の年平均増加率はパイプライン貿易量の同増加率より高く、今後も4-6%前後で推移するとの見方を示した。

13年のLNG輸出上位5か国はカタール、マレーシア、豪州、インドネシア、ナイジェリア、輸入上位5か国は日本、韓国、中国、インド、台湾で、主に中東、東南アジア、アフリカ、豪州から東アジアと欧州に供給されている。

LNG海上輸送で「長期案件の積み増し重要」

▲LNGの主要貿易フロー(2013年、出所:日本海事センター)

15年の年頭時点でLNG船は400隻超、発注残は150隻超となっており、船腹量ベースで発注残は現存船の4割を占める。このため、LNG船短期用船市場は今後も弱含みの状態が続くと予想、新規LNG輸出プロジェクトが本格化し、スポット需要が増加すれば徐々に市況は上向く可能性がある、と分析した。

日本が所有するLNG船隊は世界最大となっており、船腹量ベースで世界シェアは2割前後(2014年9月時点で24%、海事センター推計)。日本の海運大手は米国や豪州の新規LNG輸出プロジェクトに関連した新造発注を進めており、今後も日本のLNG輸入で重要な役割を果たすとみられる。

特に米国シェールガスの輸入は「LNG価格体系の多様化に寄与する点で大きな意義がある」と考えられており、同センターでは「輸入を支える日本海運の存在は日本経済、国民生活にとって重要」と指摘した。

今後の展望については、全世界のLNG輸出能力(天然ガス液化プラントの年間処理能力)が現在の3億トンから、20年までに1.5倍に増えると予想。

特に豪州と米国での新規プロジェクトによる増加分が合わせて1億トン超となり、これらのプロジェクトからアジアへの輸出量も年間8000万トンに達するとした。

これらのプロジェクトが「順調に進むかどうか」については、原油価格や需要国の動向などさまざまな要因が影響してくるとしながらも、「長期的には豪州、北米、アフリカ、ロシアからアジア、欧州への輸出が増える可能性が高い」との国際エネルギー機関(IEA)の予測を紹介した。

日本海運が輸送シェアの拡大を図っていく方策として、「計画中のプロジェクトの動向を注視するとともに、海外企業との提携といった選択肢も視野に入れつつ、長期輸送案件の積み増しを図ることが重要」と指摘。

今後は輸出国と輸入国の増加や変化、仕向地制限のない契約やポートフォリオ契約の進展、シンガポールなど取引拠点からの再輸出――など、LNGトレードの多様化が進む可能性を示した。

このほか、FSRU(浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)やFLNG(浮体式LNG生産・貯蔵設備)などのオフショア事業について、「市場としてのポテンシャルがあるだけでなく、欧米メジャーや新興国のエネルギー大手との関係深化を図る好機でもあり、LNG輸送案件への波及効果も見込める」とまとめた。