調査・データ帝国データバンク(TDB、東京都港区)は20日、トランプ関税が2025年度の日本経済に与える影響について試算結果を発表した。同社のTDBマクロ経済予測モデルを用いた分析によると、実質GDP成長率はトランプ関税がなかった場合と比較して0.4ポイント低下すると予測している。
同社の試算では輸出の伸び率が1.3ポイント下押しされることが最大の要因となる。特に自動車・同部品分野への影響が深刻だと指摘。24年の日本の対米輸出額21兆2948億円のうち7兆2575億円、構成比34.1%を占める同分野の関税率が従来の2.5%から15%へ大幅上昇する。こうした、裾野が広い自動車関連への高水準な関税は輸出全体を押し下げる最大の要因となると分析している。
また、輸出の伸び率低下は企業の設備投資にも波及するとした。民間企業設備投資の伸び率は0.2ポイント低下する見通しで、世界経済の先行き悪化に加え、米国経済の後退を受けて企業は設備投資の判断を慎重にせざるを得ない状況となる。大手企業では米国内での生産拡大を進めていくとみられる半面、日本国内での設備投資を抑制する要因の一つとなりそうだ。
輸出や設備投資に対する影響は民間法人企業所得にも及び、経常利益の伸び率は1.7ポイント低下すると予測している。トランプ関税の発動によって5年ぶりに減少へと転じる可能性がある。こうした状況は労働者の所得にマイナスに働き、個人消費を下押しする要因にもなる。民間最終消費支出の伸び率は0.2ポイント低下する見込んでいる。企業倒産への影響も深刻で、2025年度の全国企業倒産件数を2.6ポイント、260件上振れさせると見込んでいる。24年度に1万70件と11年ぶりに1万件超となった状況下で、さらなる悪化を予想している。
トランプ関税を巡る経緯は実に目まぐるしい。25年4月3日に米国・トランプ大統領は「相互関税」を公表し、日本を含む57か国・地域に対して相互関税率を設定した。日本には24%の関税率を設定したが、上乗せ部分について90日間の一時停止を許可し、8月1日までの延長となった。その間の日米交渉により、7月23日に相互関税率および分野別の自動車・同部品への関税率を15%とすることで合意した。また米国の中核産業の再建と拡大のため、米国に5500億米ドルを投資することでも合意している。しかし8月1日に署名された大統領令に日米合意の内容が反映されず、一律15%の関税が上乗せされるミスが見つかった。
現在も関税率がベースライン関税10%に15%上乗せされる状況が続いている。分野別では鉄鋼やアルミニウムに25%、銅に50%の関税率が課されており、米国の実効関税率は24年時点の2.5%から18.6%に上昇し、1933年以来92年ぶりの高い水準となっている。
同社は中小企業にとって直接的に海外取引をしていなくてもさまざまな経路を通じて影響を受けることになると指摘している。政府はこうした影響を緩和する対応策を効果的に実行する必要があり、一方で企業は自らできる範囲で情報を集め機動的に対応していくことが重要となると提言している。
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