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食品物流の波動地獄、「施設・ロボ・人」連携で脱却へ

2025年8月20日 (水)

ロジスティクスLOGISTICS TODAYは19日、「食品物流“季節波動”完全攻略」と題したオンラインイベントを開催した。イベントでは、食品物流業界が直面する季節波動やセール特売などに起因する需要変動、いわゆる「波動地獄」を乗りこなすための方策を議論した。結論として、倉庫という「施設」、搬送や仕分け作業を自動化する「ロボット」、現場で働く「人」という3つのリソースを、固定費ではなく波動に応じた変動費として活用し、三位一体で連携させる新たなモデルが有効だと示した。

▲「食品物流“季節波動”完全攻略」イベントの様子

イベント冒頭、ローランド・ベルガーの小野塚征志氏が、波動の構造的課題を解説した。欠品リスクなどを恐れて、小売から卸、メーカーへとサプライチェーンを遡るにつれて発注量が増幅する「ブルウィップ効果」によって、上流の事業者ほど過剰在庫や食品ロスのリスクに直面すると指摘。対策の方向性として、従来の「ジャストインタイム」思想から、不測の事態に備える「ジャストインケース」への発想転換を提唱し、その鍵が「物流コストの固定費から変動費への転換」にあると強調した。

▲ローランド・ベルガーの小野塚征志氏

続いて、コスト変動費化を実現する最新ソューションを登壇3社が提示した。霞ヶ関キャピタルは、冷凍冷蔵倉庫を必要な時に必要な分だけ利用できる物流プラットフォーム「COLD X NETWORK」(コールドクロスネットワーク)を紹介。最短1日・1パレット単位でのスポット利用を可能とするサービスを活用し、繁忙期の保管スペースを固定費ではなく変動費として確保できる点を訴求した。


▲(左から)▲霞ヶ関キャピタルの小野田年志氏、藤原道長氏

住友商事は、物流現場の生産性に関する情報を集約・可視化し、倉庫運営を高度化するSaaS型システム「スマイルボードコネクト」を解説。スポットワーカーを含む作業員個々の能力をデータ化し、精度の高い作業計画の立案やリアルタイムでの最適な人員再配置を支援する。これにより、波動に合わせて人件費を最適化しながら作業品質も平時と同じレベルを確保する。

▲住友商事の犬山直輝氏

ギークプラスは、棚が人のもとへ移動するGTP方式の棚搬送型AGV(無人搬送車)による波動対応を説明した。AGVの導入で作業者の「歩行・物探し」作業をなくし、ピッキング生産性を3倍に向上させた事例を紹介。特定の繁忙期に合わせてロボットを期間レンタルするサービスを提供しており、自動化設備への投資も変動費化できる点を強みとした。

▲ギークプラスの嶋田由香里氏

パネルディスカッションでは、「施設・ロボット・人」の連携モデルについて議論が深まった。霞ヶ関キャピタルのマルチテナント型冷凍冷蔵倉庫に、ギークプラスのレンタルロボットを導入し、スマイルボードコネクトで作業員を最適配置・融通するという具体的な連携の可能性が示された。コールドチェーンを支える同業者が施設・ロボット・作業員を「シェア」する発想について、小野塚氏は「低温物流はプレイヤーが限られるからこそ、逆に業界共通のプラットフォームを構築し、リソースをシェアリングする取り組みが進めやすい可能性がある」と述べ、各社が連携し、業界全体の課題解決に向けたハブとしての役割を担うことへの期待感を示した。

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