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九州西岸で居眠り運航増加、運輸安全委が分析

2015年8月27日 (木)

事件・事故運輸安全委員会長崎事務所は27日、九州西岸で「居眠り運航」による事故が3年間で25件と多く発生していることを受け、事故事例の分析レポートをまとめ、公表した。

運輸安全委員会船舶事故ハザードマップより

▲2012-14年の貨物船事故発生状況(出所:運輸安全委員会船舶事故ハザードマップ)

まとめによると、事故の発生時間帯は6時台が5件、4時台が4件、2時台が2件、1時台と3時台が1件と、深夜から早朝にかけて多く発生しており、全体の48%を占めていることがわかった。事故を起こした船舶は漁船(17隻)と貨物船(5隻)を合わせて22件と全体の88%を占めた。貨物船はすべて100トン以上の船舶だった。

25隻中、油送船、貨物船、引船の3隻が船橋航海当直警報装置を装備していたが、例えば総トン数199トンの貨物船では、5分ごとに警報が鳴る設定となっていた。しかし、操船者の動きに反応して警報が止まり、次の警報が鳴るまでの間に事故が発生。

297トンの油送船も5分ごとの警報設定となっており、操船者は「右手で操舵スタンドをつかみ、左手で舵輪を握り、立って操船」していたにもかかわらず、操船者が警報を止めてから次の警報が鳴るまでの間に事故が発生した。

■深夜当直の疲れ残し、背もたれ付きの椅子に座って操船、居眠りに
夜間、貨物船の船長が積み荷役を終え、揚荷地へ向けて航行中、居眠りに陥って乗り揚げた事例を見てみる。当時の天気は晴れ、風向は南西、風速4-5メートルで視界は良好、海上も平穏で潮流は北西流1ノット以上となっていた。

貨物船(499トン)は、船長を含めて5人が乗り組み、砂1540トンを積載して長崎県壱岐市の芦辺港から沖縄県金武中城港に向けて航行中、単独で当直中の船長が、平戸島西方沖を自動操舵で南南西進中、居眠りに陥り、変針予定場所を通過して航行。

この結果、2012年9月19日2時20分頃、長崎県西海市平島西岸の岩場に乗り揚げた。貨物船は球状船首部に破口、凹損、船底外板に破口、凹損、擦過傷が生じた。

船長は事故3日前の5時から翌日4時まで守錨当直などを行い、一睡もしていなかった。一等航海士から当直を引き継いだが、「まだ疲れが残っている」と感じていたという。

その後、船長は背もたれと肘掛けの付いた椅子に腰を掛け、単独で当直を行い、自動操舵として9.5ノットの対地速力で南南西へ進んだが、海上が穏やかで視界も良く、周囲に他船の灯火が見当たらず、レーダーでも他船の映像がなかったことから、眠気を感じるようになった。

結果として変針後、次の変針予定場所まで30分あることを確認した後に居眠りに陥り、変針予定場所を通過して平島西岸へ向けて航行、同島西岸の岩場へ乗り揚げた。

運輸安全委員会長崎事務所では、「まき網漁船や貨物船で、また、単独当直で、自動操舵装置を使用し、椅子に座った状態で操船中、気の緩みや睡眠不足、疲労の蓄積から多く発生している」と指摘。

単独で操船する場合は座ったまま同じ姿勢を続けず、立って操船したり、舵輪による手動操舵にしたりするなどして、居眠りに陥らないようにすることを勧めるとともに、もし眠気を感じたときは、早期に眠気を払拭する措置をとって居眠り防止に努めるよう結んでいる。