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負債額15年最大、好業績時の船隊拡大裏目

第一中央汽船が民事再生申立て、負債1196億円

2015年9月29日 (火)

ロジスティクス第一中央汽船と子会社のスターバルクキャリア(パナマ)は29日、東京地裁に民事再生手続開始を申し立て、同日受理された。同地裁は弁済禁止などの保全処分、監督命令を発令した。負債は第一中央汽船が1196億800万円、スターバルクが568億5900万円で、2社合わせて1764億6700万円と2015年に入って最大の倒産となった。

同社は第一汽船(1933年設立)と中央汽船(42年設立)が60年に対等合併して発足。鉱石類や木材、原油などのバルク貨物輸送に強みを持ち、拡大戦略に転換した後の07年度には1666億2700万円を売り上げ、過去最高益を計上していた。

08年度のリーマンショックに伴い海運市況が暴落した後は好況時に契約した用船契約の用船料が大幅な逆ザヤとなり、財務体質が急激に悪化。自社船売却資金を使用した高コスト用船の用船契約の解約により、10年度にいったんは再び黒字化を達成したが、その後、保有船隊の拡大を図ったのが裏目に出た。

同社は市況下落時に船価が低下したタイミングで船舶投資を積極化したものの、海運業界が欧州危機、中国の経済成長の鈍化、大量の新造船竣工で未曾有の長期的な海運市況の低迷に突入した結果、再び用船料の逆ザヤで損益が悪化するとともに、資金調達先未定の新造船に対する資金負担が増えてキャッシュフローも悪化し、自力で安定的な事業継続が困難な状況に陥った。

こうした事態に対し、同社は13年に主要株主の商船三井などにA種種類株式を発行し、314億円を調達したが、その後も市況が回復せず、逆ザヤを生じさせている高コスト用船契約の解約も限定的なものにとどまったため、収益構造の抜本的な改善に至らず14年3月期の経常損失は85億8400万円に達した。

さらに、貨物船「オーシャン・ビクトリー」号の全損事故に伴い英国で損害賠償責任をめぐり、同社に59億3700万円の支払いを命じる第1審判決が出されたことから、その年の最終損失額は154億2900万円に上るものとなった。控訴審では同社が全面勝訴している。

その後、同社グループは14年当時の市況などを反映させた新中期経営計画を策定し、外部投資家などへD種種類株式を発行することで85億円の資金調達を行うとともに、船隊縮小、コスト削減、近海不定期船事業の事業再編策を講じたが、海運市況はその後さらなる低迷を続け、収益を圧迫。

利益を生み出せない状況から抜け出せず、15年3月期は営業損失131億9000万円、最終損失33億700万円となり、4期連続の最終赤字を計上。売上高はピーク時より400億円以上少ない1237億9000万円にまで減少したにもかかわらず、運航隻数は逆に増加し、経営圧迫要因として重くのしかかっていた。

同社は15年2月、国内船主数十社に対し、用船料20%の減額や無償解約を3月から実施してもらえるよう要請。併せて収益性の高い船舶の売却も進めたが、抜本改善には程遠く「このままでは近い将来、事業継続に著しい支障が生じることが確実な状況となった」ため、民事再生手続開始の申し立てを選択するに至った。

スターバルクは第一中央汽船からの用船料収入が売上の大部分を占めており、第一中央汽船が民事再生手続開始の申立てを行ったため、今後の用船料収入が減少する見通しとなった。また、売船市況の悪化で保有船舶の含み損を抱え、実態として債務超過となることから、事業の実効的な再建を目指して民事再生手続開始を申立てた。

今後、同社とスターバルクはスポンサー選定を視野に入れながら、事業再建に取り組むこととなる。