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【特集】ネットスーパー7社の情報流出「物流会社がやるべきこと」

2010年8月4日 (水)

話題ユニー、イズミヤなどネットスーパーを運営する7社のシステム委託先が不正アクセスされ、クレジットカード情報などの顧客情報1万2000件以上が流出する事件が発生した。既に不正使用されたことも確認されている。

 

驚くのは、名前のよく知られるスーパーが7社も、1つのシステム会社に委託していたことである。成長分野として脚光を浴びるネットスーパーだが、今回のような事件が続けば消費者の信頼を失い、成長の機運は瞬時に崩壊するであろう。

 

今回の事件はなぜ起きたのか、ネットビジネスコンサルタントに話を聞いた。

 

――ネットスーパー7社が「相乗り」するシステム会社で、顧客情報の流出・不正利用事件が発生した。

 

コンサルタント  ネットスーパーの運営者は、リアルビジネスでのメジャーな小売事業者が先行し、インターネット人口の拡大とともにさらなる成長が見込まれる分野だ。この流れに中小の小売事業者が乗ろうとしている。

 

――ネットスーパー運営を手軽と思う風潮があり、資金力に劣る中小事業者が次々に参入している。

 

コンサルタント  パッケージ化されたネット通販システムの利用が安く、参入も容易だという認識が定着しつつある。特に利益率の低い小売事業者にとっては、規模を問わず導入実績があるシステムを利用するという認識が広がっているため、1社のシステムに相乗りする現象が起きたと考えられる。起こるべくして起きた事件だ。

 

――どのような影響が見込まれるか。

 

コンサルタント  消費者心理が敏感に反応し、一時的にネットスーパーの利用を控える動きが拡大するかもしれない。運営会社は、速やかに有効な対策を打ち出し、自社サービスの「安全」を宣言する必要がある。

 

――具体的にどのような対策が考えられるか。

 

コンサルタント  まずは、個人情報を保護するシステムの強化が不可欠だ。しかし、今回の事件のような「不正アクセス」とシステム保護策の進歩は「いたちごっこ」であるのが実情で、抜本的な対策は困難とも言える。

 

――どうすればいいのか。

 

コンサルタント  商品の配送を受け持つ、物流事業者の協力が有効だと考えられる。商売の基本は対面販売だが、実際にネットスーパーの利用者と対面するのは、個人宅にモノを届ける物流事業者であり、物流事業者が現金決済に対応できる機能を整備し、ネットトラブルをカバーする仕組みを提供すべきだ。この仕組みにより、現状ではトラブル発生でネットスーパーを利用できなくなるユーザーを救済することになり、被害の拡大を防ぐことも可能になる。「届ける」というサービスを維持する仕組みとして、ネットスーパーに現金決済の選択肢を提供するのは効果がある。

 

――既に大手宅配事業者を中心に現金決済(代金引換)は浸透している。

 

コンサルタント  ネットスーパーの物流の担い手は、大手宅配事業者ではなく、ノウハウを持つ地元密着型の物流事業者であることが少なくない。大手宅配事業者以外でも、現金決済は一部で実現しているが、利幅の薄いネットスーパー運営者がコストアップにつながるとして、回避する傾向にある。

 

――現金決済の枠を脱却したことで可能になったのがネット通販・ネットスーパーであるなら、現金決済は「過去に逆戻り」しているような印象を受けるが。

 

コンサルタント  元に戻るように見えるかもしれないが、これは「安全」を担保するためのバックアップ機能と考えるべき。事件で浮き彫りになったネットビジネスが抱える欠点(不正アクセスなどによる情報漏えい)を補完できるポジションにいるのは、物流事業者しかない。現金決済機能を提供することで、物流事業者の存在感とビジネスチャンスは大きくなる。コストは高くなるかもしれないが、この機能にかかる費用は「安全」を担保するために不可欠であり、物流コストと捉えるのはナンセンスだ。そういう意味で、今回の事件は、物流会社から捉えることが可能なケースだったと言える。