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2025年上半期ニュース総まとめ・「物流施設」中編

エリアごと「適材適所」の物流施設開発

2025年8月15日 (金)

拠点・施設2025年上半期、物流不動産市場では首都圏の一極集中から一歩進み、関西・中京圏における開発・稼働のニュースが相次いだ。これは単なる開発ラッシュではなく、「供給の適地」を見極めた地域戦略が鮮明になってきたことの表れである。加えて、燃料費の高騰なども、より消費圏に近接した物流施設の需要を高める一因となっていることも間違いない。2024年問題を背景とした中継拠点の再編成や、地方消費地への分散投資といった構造変化に応じ、開発プレーヤーの選球眼が問われる局面だ。

名古屋港を軸に動く中京圏

▲「(仮称)LOGIFRONT名古屋みなと」完成イメージ

中部圏も、首都圏同様に22年以降の大型物件の供給増加とともに、空室率が上昇したエリアである。特集記事「名古屋港の物流再編」では、東名高速道路から名神高速道路を基幹道路とする内陸部の開発から、より大消費圏へのアクセスに優れた伊勢湾道周辺など名古屋港エリアへの開発へとシフトしている。本州の中心地で幹線物流における中継点の役割とともに、従来の湾岸自社施設からのリプレース、活性化する最終配送需要への対応などを担う機能性が求められる状況を示し、名古屋市内の湾岸エリアのみならず、その東部にある東海市や大府市などへも開発エリアが拡大している状況だ。相次ぐ大型物件の供給を受けての空室率上昇から、今後は既存空室の消化も進むことが予想される。

消費圏へのダイレクトアクセスが重視される傾向から、施設の立地もインターチェンジ近隣だけではなく、住宅街と近接した地域、人材確保に重点が置かれた開発事例が増加している。

ことし11月の完成を予定している日鉄興和不動産(東京都港区)の「LOGIFRONT名古屋みなと」(仮称)は隣接地に商業施設が集まる生活空間で建設が進められている。近隣はもちろん、名古屋市中心部からの通勤も想定できる立地を誇る。

▲「プロロジスパーク東海1」(右) 「東海2」(左)完成イメージ

東海市の中心地、名古屋鉄道常滑線・太田川駅からは徒歩8分という抜群の立地で、地域と連携した街の中枢機能としての物流施設像を打ち出す「プロロジスパーク東海1」は27年の完成を予定、隣接地には「東海2」の開発も進む。中京圏への配送はもちろん、東西の結節点、さらには中部国際空港との接続の良さもセールスポイントとなっている。ことし10月の完成が予定される「Landport東海大府」は、延床面積は24万6539平方メートル、地上6階建てとなる巨大施設として、中京エリア機転のポスト24年対応を代表する物流施設としてのポテンシャルを備える。国内はもちろん、日本経済と港湾や空路などを結ぶ立地を強みとして、次代の戦略拠点としての運用も期待される。

巨大商圏の物流ニーズが広がる関西圏

関西では、多極化する都市構造に対応するかたちで、各エリアに特色ある施設が供給されている。大阪、京都、兵庫の関西3都市をターゲットとする物流ニーズは旺盛であり、それぞれの立地ごとの優位性を全面に打ち出した、テナント獲得も激化している。今期に入っても引き続き供給は活発だが需要も堅調で、空室率の上昇は緩やかなペースにとどまると予測されている。安定した需給動向を背景に募集賃料への転嫁が積極的に進められ、募集賃料は3四半期連続での上昇で前期比3.5%の大幅上昇となっているのもこのエリアの特色だ。

▲「高槻ロジスティクスセンター」(出所:オリックス不動産)

本誌では、昨年末に大阪北摂エリアの茨木市での供給動向を紹介したが、ことしに入っても茨木同様の物流ポテンシャルを誇る高槻市の、オリックス不動産「高槻ロジスティクスセンター」の6月完成など、関西からの旺盛な最終配送需要に対応する施設開発が続いていることを報じている。

そのほかにも、ESRの「川西ディストリビューションセンター」の2棟が完成し、同社最大級のプロジェクトとして国内最大級の物流施設もするなど、大規模な供給が続く。

野村不動産も、首都圏中心の供給をエリアへ拡大する方針を表明しており、関西エリアでは、「Landport京都伏見」(27年5月)「Landport北伊丹」(28年2月)の開発を発表している。ことし2月に完成した三菱HCキャピタル「CPD西宮北WEST」は神戸市から、阪急阪神不動産「ロジスタ京都伏見」(26年7月完成)は京都市内から、それぞれ広域配送と都市内配送の双方への対応をうたう。EC需要、物流危機対応や交通インフラ網の発達に伴い、湾岸エリアから内陸中継地へと、新規施設の集積地が移行している状況である。

エリアごとの“最適立地”を問う時代

かつての「東京周辺への集中」の時代から、物流は明確に「適材適所」への移行を遂げつつある。EC取り扱い商品が、食品や日用品など多様化し、エリアの消費圏ごとの最終配送拠点需要も高まっている。施設そのものの性能に加え、立地戦略が荷主・運送会社・消費者すべてにとっての効率をどう実現するかという「物流設計力」が開発側にも求められている。

上半期に供給が進んだこれら関西・中京エリアの新施設群に加えて、九州エリアや東北においてもまだまだ新規施設供給が求められる状況といわれており、やや飽和状態の首都圏開発からエリアへと、国内物流再構築のポイントも変化しつつあることが確認できる。

後編では、冷凍冷蔵・環境対応・地域共生などをテーマとした上半期動向について総括する。

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