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日本郵船、入社式「プラスアルファで物流のエキスパートに」

2012年4月2日 (月)
工藤泰三社長

工藤泰三社長

イベント日本郵船の工藤泰三社長が2日入社式で行った訓示は次の通り。

  

昨年は皆さんも知っている通り本当に大変な1年だった。

 

3月の東日本大震災に始まり、タイの大洪水やヨーロッパの金融危機などで同社も大変な影響を受け、2011年度は310億円を超える経常赤字を計上する見込みだ。

 

2012年度は何としても黒字に復帰しなければならない。それと同時に、安定的な事業拡大を目指さなければならない。 

 

安定的に事業を拡大するとはいっても、日本の少子高齢化などを考えると、「日本出し・日本向け」をベースにした事業では拡大の余地はほとんど残っていない。

 

そのため、事業を拡大するには、当然海外に進出するしかない。現時点での同社の売上高は日本発着が3割程度で残りの7割は三国間輸送が占めている。今後さらに成長するためには、この三国間輸送比率をより高めていく必要がある。 

 

幸い船は海を渡り、世界中どこにでも行ける。しかし船を持っているだけでは、海外事業の拡大は簡単にはできない。

 

世界の船の大半は、日本、韓国、中国で建造されており、船の性能、価格にはほとんど差がない。どのように競合他社と戦っていくのかは、船に乗る人、船を使う人、船を使ってサービスを提供する人に全てが掛かっているのだ。 

 

今日入社した仲間の中には三など航海士もいる。船に乗るというのは大変な仕事だが、逆に言えば先程言った競合他社と差別化を図れる一番大きな部分だ。

 

海運業にとって一番大切なことは、とにかく事故を起こさない。事故を起こせば環境汚染にも直結する。そのため、まずは安全航行。安全でなおかつ環境に優しい運航を提供すれば、間違いなく競合他社と戦っていける。

 

当社の場合、単純な船だけではなく、大型船やドリルシップ、シャトルタンカーなどの船も取り扱っている。こういう部分で私は間違いなく他社と差別化を図れると確信している。今日入社した海の仲間もこの部分に大いに貢献してくれることを信じている。 

 

そして、船を使ってサービスを顧客に提供する部分だが、正直大変苦労している。先程言った通り、船の質には大きな差異がない。

 

そんな中でどう他社と競合していくのか、その方向性を示したのが昨年策定した中期経営計画”MoreThanShipping2013″だ。

 

当社は、船だけではなくプラスアルファを顧客に提示し満足してもらおうと考えているので、私は皆さんにプラスアルファを勉強してもらいたい。

 

船だけではなく物流業に従事していることを自覚し、顧客に対して「物流はすべて任せてほしい」と言えるような人間に育ってほしいと思っている。

 

日本郵船グループには、船に加えて、陸上の倉庫やトラック、飛行機もある。それらを上手く組み合わせて、顧客が求める物流システムを構築する、それが私たちの使命だ。

 

船だけではなく、すべての部分で顧客に貢献できれば、私たちは生き残っていけると確信している。 

 

一般消費財を運ぶコンテナ船では、リーマン・ショックやヨーロッパの金融危機などで荷動きが大変鈍化している。一方で、船は大量に建造が進んでいる。

 

当然需給ギャップが拡大しており、世界中の主だったコンテナ会社が合従連衡の道を求めている。 

 

昨年12月に発表した「G6アライアンス」は、グランドアライアンスに所属する日本郵船(日本)、Hapag-Lloyd(ドイツ)、OOCL(香港)とザ・ニューワールドアライアンスに所属する商船三井(日本)、APL(シンガポール)、現代商船(韓国)の6社で構成され、アジア-北欧州航路とアジア-地中海航路で3月から共同運航を開始した。

 

つまり、6社が全く同じサービスを顧客に提供することになる。そこでどう差別化を求めるのか。当社がこれまで総合物流事業に力を入れてきた由縁がここにある。

 

君たちは、船だけではなく物流事業のエキスパートになってほしい。これが私の心からの願いだ。君たちにはその資質がある。大いに頑張ってほしい。 

 

仕事も大事だが、君たち自身の生活、人生はもっと大事だ。仕事を楽しみつつ、君たちの人生を充分に楽しんで、素晴らしい人生を送っていってもらいたいと思う。

 

君たちにはそれをかなえるツールがある。日本郵船グループは大変いい会社だ。そのツールを十二分に活用して、これから長い君たちの人生を大いにエンジョイしてもらいたいと思う。

 

一緒に頑張っていこう。