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背景に金融機関の大規模リストラ

日通が減損損失500億円、ワンビシ買収「効果見込めず」

2018年3月30日 (金)

話題日本通運は3月30日、一昨年12月に豊田自動織機から買収したワンビシアーカイブズとの「相乗効果」が見込めないとして同社の“ブランド価値”に相当する「のれん」を見直すなどし、今期決算に500億円の減損損失を計上すると発表した。これまで日通は通期業績予想として430億円の利益を見込んでいた。保有株式を売却することで最終赤字は回避する見通しだが、最終利益は10億円にとどまりそうだ。

ワンビシアーカイブズは、官庁や金融機関などの機密性の高い文書・データ保管に強みを持っているが、日通は同社を子会社化することで「社会インフラとしてのセキュリティ&ストレージプラットフォームの構築を加速」させ、サービスメニューを拡充できると判断、2015年12月に豊田自動織機から863億円で全株式を買収した。

買収後、日通は「17年度以降、海外への事業展開などで相乗効果を計画」していたが、ワンビシの主要顧客層となる金融機関を取り巻く環境がAI、IoT、ブロックチェーン技術などの普及に伴って激変し、大規模なリストラを断行するなど厳しいコストカットにさらされる事態となった。

こうした環境変化が今後も続くとみられることから、日通は「買収による相乗効果がすぐに見込める状況ではなくなった」と判断し、今後の事業計画の見直しを決定、のれんと固定資産で500億円の減損損失を計上することとした。

また、タイ事業でも合弁相手から持ち分を買収して営業強化に取り組んでいるが、買い取った時点の事業計画を下回っていることを受け、のれんと固定資産で70億円の減損損失を計上する見込みとなった。

これらの減損損失によって今期連結業績は最終利益段階で570億円の悪化要因が生じるが、保有株式の売却で57億円、退職金給付信託設定益で156億円を計上し、10億円の黒字を確保する見通し。