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小渕代表「4Qは本当に精神的に不安来た」

クルーズに物流改革の洗礼、近く体制整う見通し

2019年5月14日 (火)

話題ファッション通販サイト「SHOPLIST」(ショップリスト)の運営会社を傘下に持つクルーズが13日に発表した2019年3月期連結決算は、売上高が初めて300億円を超えた一方、物流倉庫の立ち上げ費用が想定を上回った影響で10億円の営業損失(前期は7.2億円の利益)を計上した。

新倉庫はラサール不動産投資顧問が相模原市中央区に開発した延床面積4.5万平方メートル(1.3万坪、4階建て)の施設を自社専用倉庫として借り受け、「売上の9割を占める全商品を3日以内に配送」する物流体制を構築するために開設したもので、当初より数か月遅れて19年4月に稼働を開始した。


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クルーズ、相模原にSHOPLIST専用物流センター(2017年10月30日掲載)
https://www.logi-today.com/302858

「3日以内配送」の実現と今後の事業成長を見越し、床面積は旧倉庫の3倍、取り扱うことができる商品(流通総額)は800-1000億円と、現在の事業規模からみればかなり大きな”器”となるが、出荷までのリードタイムの長さが購入率に大きな影響を与えることを重視。「今のうちにキャパシティを広げておく」という考え方を優先した選択だといえる。

今回の10億円という営業損失は「営業損益を赤字にしてでも利益・現金を投資して売上を拡大する」という事業戦略の結果であるともいえるが、狙い通りの成果を獲得するための制御が難しいのも、物流改革にはつきものだ。

新倉庫の開設によって固定費は増加することになり、事実、同社の公表資料によると賃料とマテハン費用の合計は年間7.2億円に達する計算で、予定していた18年12月からの稼働も実現しなかった。

導入したマテハンが稼働しない分の追加作業費用が四半期ごとに2000万円かかり、新倉庫への引越し費用(3000万円)も上乗せされた。稼働開始の遅れが加わったことで、18年11月から19年1月までの3か月間にわたり、配送日数は最大2日間の遅延が発生。これが購入率の低下に直結し、予定していた「積極的な広告投資」を抑えざるを得なくなり、「思ったように売上高を伸ばすことができない」という悪循環を招いた。

同社の物流費の推移を見ると、18年3月期の1年間は第1四半期(4-6月)5.8億円(対売上高比率11.2%)、第2四半期5.7億円(11.7%)、第3四半期7.2億円(11.6%)、第4四半期5.8億円(11.5%)――と安定していたのに対し、19年3月期は第1四半期8.6億円(13.6%)、第2四半期9億円(14.6%)、第3四半期11.9億円(16.4%)、第4四半期9.6億円(18.7%)と、物流コスト比率は期初から上昇、遅延が発生し始めた第3四半期以降に急激な上昇カーブを描いたことがわかる。

同社の小渕宏二代表は19年2月、投資家に向けたメッセージの中で、赤字要因について、(1)新倉庫が稼働したことで物流費の対売上比率が1Q・2Qは14%前後だったのに対し3Qは16.4%に増加(2)新倉庫の稼働に伴い、想像以上にドタバタしたことでいつも以上に出荷までのリードタイムが発生し、それによって購入率に影響が出た(3)構造的に売上が伸ばせないタイミングでも昨年同等以上のプロモーション比率の広告を打った(4)倉庫の要因で低くなってしまった購入率を元に戻すために送料無料施策を必要以上に打ってしまい、送料負担が大きくなり利益を圧迫してしまった――と第3四半期を振り返った。

これが、第4四半期を終えた後の5月13日に発したメッセージでは、こう変わる。

(ショップリストの想定外の営業損失が)4Qから急速に落下したので止めるに止められず、4Qは本当に精神的に不安が来た。クルーズの小渕宏二代表

「売上の90%以上を構成するすべての商品を3日以内に配送する」という重点目標を実現するための手段として倉庫の拡張移転に踏み切った結果、逆に配送日数の遅延を招くという「物流改革の洗礼」を浴びてしまったわけだが、現在の”3日以内配送率”は56%に達し、今年度7-9月期(第2四半期)には達成率100%を想定できるレベルになっているという。

同社が「3日以内に配送できる状態が整った」というように、産みの苦しみを克服した分、今期の見通しは明るそうだ。