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トラック40台購入と社内配転で配送力確保

大塚家具が倉庫移転断念、物流内製化でコスト削減

2019年7月4日 (木)

話題大塚家具は3日、予定していた第三者割当による新株発行の一部が中止となり、見込んでいた調達資金が12億円程度少なくなったことを受け、中国向けECを本格展開するための倉庫自動化費用を取りやめることを明らかにした。

同社は調達する資金の使途として当初、「ECビジネスを強化し、店舗事業に次ぐ第2の柱に育てていく」として、現在の物流拠点「横浜サービスセンター」(横浜市鶴見区)を新倉庫に移転する方針を打ち出し、自動化投資に8億円、現倉庫の原状回復費用として4.5億円、差額敷金1.5億円、移転費用1億円、配送トラック40台分の購入費として2.5億円の計17.5億円を投資することにしていた。

しかし、予定していた調達資金が当初の76億円から64億円へと12億円程度少ない金額にとどまることが判明。倉庫移転と大規模な自動化は「今後の検討課題」として事実上断念し、将来の効率化をにらんだマテハン購入費として3.3億円、トラック購入代金の2.5億円――の計5.8億円へと、投資計画を縮小せざるを得なくなった。

■移転断念も「トラック40台分の購入計画」を残した理由は
ここで注目したいのは、「トラック40台分の購入」を投資計画に残したことだろう。同社は商品の配送から組み立て、設置までを家具配送専門のスタッフが一貫して手がける「付加価値の高い配送サービス」を他社との差別化要素に位置づけているが、配送スタッフに高い技術力を求めることになるため年々、外注による確保が困難になっている。

一方でECビジネスの強化方針は撤回していないことから、これまで「2割程度」だった自社配送力を「8割程度」まで高める必要があると判断。配送力を自社内で確保するため、トラック40台を購入するとともに、配送スタッフは「社内の配置転換」で確保し、外注費を削減して年間5億円程度のコスト削減につなげたい考えだ。

ただ、配置転換で社員を配送要員にシフトし、コスト削減につなげるという同社の狙いは容易ではない。また中国向けECも成功が約束されたものではなく、難易度の高い「物流改革」と「EC強化」が同社の命運を左右しかねない状況だといえよう。配置転換が社員の勤務意欲を削ぐことのないよう、経営陣には慎重な舵取りが求められる。