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運輸・郵便、正社員不足最下位も新卒採用より在職者

2019年10月4日 (金)

話題厚生労働省がこのほど発表した8月の労働経済動向調査(四半期ごと実施)によると、運輸・郵便業の「正社員等」過不足判断(DI、8月1日現在)は、「不足」が「過剰」を大きく上回り、不足超過のポイント数が全産業でもっとも高くなったことが分かった。

この指標は、1年間以上の契約によって雇用されている「正社員等」労働者の過不足を判断するためのもので、2728事業所から回収した調査票をもとに、「不足」と回答した割合から「過剰」の割合を差し引いて算出する。

全産業平均が不足超過40ポイントであったのに対し、運輸・郵便業は同55ポイントで、5月調査から2回連続でワーストを記録。2月調査で65ポイントだった建設業は、8月調査では51ポイントまで改善している。

一方、「パートタイム」労働者の過不足判断では、全産業平均29ポイントに対して運輸・郵便業は30ポイントと平均的な数値になっていることから、他業種に比べて「正社員等」労働者が不足している現状が浮き彫りになった。

これに対し、厚労省は8月調査の特別項目として過去1年間と今後1年間の労働者不足対処法について設問。過去1年間の対処法としてもっとも多かったのは「正社員等採用、正社員への登用の増加」で61%、次いで「離転職防止策の強化、再雇用、定年延長」が39%、「臨時・パートタイムの増加」が36%、「求人条件(賃金・労働時間など)の緩和」が35%、「在職者の労働条件の改善(賃金)」が34%――と続いた。今後1年間の対処法についても同様の割合で回答があった。

一方で、採用状況に関する調査では、「2018年度新卒採用枠で正社員の募集を行った」運輸・郵便業の企業は47%(全産業平均64%)にとどまり、35歳未満の「既卒者は応募可能だった」企業は30%(全産業平均44%)と、若年層の採用には消極的であった。

こうした結果を踏まえると、運輸・郵便業は「正社員等」労働者不足ワーストの状況に対し、在職者の正社員への登用、賃金など労働条件の改善による離転職防止、再雇用・定年延長――といった対処法で現状を乗り切ろうとしていることが伺える。

しかし実際には、物流需要の高まりを前にその担い手の採用を進めたいにも関わらず、若年層から不人気などの理由で新卒採用コストに見合うだけの成果を得られないため、在職者に頼らざるを得ないと捉えるほうが実態に合っているのかもしれない。あるいは、先行きが見通せないため採用に踏み切れない可能性もある。いずれにしても、この状況が続けば業界の高齢化がますます進行することが懸念される。

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