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久留米運送、労働局が「働き方改革」の参考事例に

2019年12月26日 (木)

ロジスティクス福岡労働局はこのほど、長時間労働の削減と働き方改革に取り組む「ベストプラクティス企業」として、久留米運送(福岡県久留米市)を伊藤正史労働局長が訪問し、同社の二又茂明CEOと意見交換を行ったことを発表した。

▲(出所:久留米運送HP)

久留米運送は、特別積み合わせ運送を中心に展開し、69か所の拠点と15か所の物流センターを保有。近年は、血液・医薬品輸送、学校給食配送、家電リサイクルなどにも力を入れており、従業員2370人のうち、1922人が正社員として在籍している。

同社が長時間労働削減に取り組み始めたのは、2010年4月に現CEOの二又茂明氏がトップに就任してからのこと。「時間外労働の削減」を表明し、「現場の増員」を要請するとともに、増員コストを吸収するための「運賃交渉」を開始した。結果、セールスドライバーは8年で467人増加、運賃率も20%以上改善し、ドライバー職の時間外労働を目標の月60時間以内に収めることに成功。一般社員も1人あたり月15時間以上の時間外労働を削減したことから、36協定の特別条項の上限も引き下げた。

▲久留米運送の二又茂明CEO

この間、同社は時間外労働ありきの賃金体系を見直し、固定給の比率を高める賃金体系へ移行。2019年度からは、時間外労働を削減した社員に「生産性向上手当」を支給する制度を設け、給与総額が前年同額となる仕組みを採用した。さらに、同社は2020年から「完全週休2日制」を導入することを表明しており、働き方改革関連法の年間960時間の上限適用にも前倒しで対応することを検討している。

同社の二又茂明CEOは、「親の介護が必要となる社員が年々増加し、本人の希望に合わせて地元に戻しているが、その後の人員確保に苦労している。今後も引き続き労働条件の改善に取り組み、これまで以上に『健康経営』に力を入れていく」と話した。

伊藤正史労働局長が中小事業者向けのアドバイスを求めたところ、二又CEOは次のように答えた。

▲聞き取りの様子

二又CEO「1社単独で「働き方改革」を克服するのは険しい。「共同」「連携」「連帯」の3つがキーワードになる。当社も共同配送、共同幹線輸送、中継輸送などに取り組んでいるが、将来的には共同で中継基地を設けて共同運行する形態が普及していくと考えている。小規模事業者は、地域に密着した特化事業に視点をおくのも重要な選択肢かもしれない」

福岡労働局では、「ベストプラクティス企業」を選定するにあたり、労災発生状況などから運送業界の「働き方改革」に着目。特に九州-東京間の長距離輸送を担う事業者は、地理的条件で厳しい環境にあることから、地元大手の久留米運送に聞き取りを行った。過重労働特別監督監理官の渡辺純一氏は、「多くの地元運送事業者が苦労している。中小事業者向けに少しでもヒントになれば」と、取り組みへの思いを口にした。