ECアマゾンジャパン(東京都目黒区)は17日、名古屋市港区の「Amazon名古屋みなとフルフィルメントセンター」お披露目会を実施した。同センターは地上4階建て、延床面積12万5000平方メートル、商品保管容量137万立方フィートの規模を誇り、1900万個の商品を保管可能だ。8月に稼働を開始したこの物流拠点は、1日当たりの最大入出荷数が60万個以上となる西日本最大のフルフィルメントセンター(FC)で、数千の雇用機会を創出する。

▲Amazon名古屋みなとフルフィルメントセンター
お披露目会ではアマゾンジャパンオペレーション技術統括本部統括本部長の渡辺宏聡氏とAmazon名古屋みなとFCサイトリーダーの鈴木マリアン氏が登壇。渡辺氏は「東海エリアにおける顧客ニーズの高まりに対応するため、在庫・入出荷能力を増強する必要があった」と拠点設立の背景を説明した。この後、参加者は60分間にわたって施設内部を巡回し、最新の物流テクノロジーや環境配慮技術を見学した。

▲(左から)Amazon名古屋みなとFCサイトリーダーの鈴木マリアン氏、アマゾンジャパンオペレーション技術統括本部統括本部長の渡辺宏聡氏
この日、参加者は入荷から出荷までの工程を時系列で見学。まず商品の傷などを検査する受領・検品エリアから始まり、在庫保管を担うアマゾンロボティクス、棚出しエリア、自動梱包機、最適なパッケージをする荷合わせシステム、出荷作業まで一連の流れを確認した。見学ツアーで最も印象的だったのは、Amazon Roboticsが稼働するフロアの光景だ。一面に広がる黄色い商品棚が整然と並ぶ中、円盤状ロボット「Amazon Robotics Drive Unit」が静かに、しかし確実に動き回っている。これらのロボットは高さ1.5メートル、商品棚全体を持ち上げ、まるで将棋の駒を動かすように、必要な場所へと運んでいく。

▲まるで見えない交通整理システムに従うように整然と動き回るAmazon Robotics
ロボットの動きは驚くほど滑らかだ。棚を軽々かつ円滑に運ぶ姿は、まさに未来の物流現場を目の当たりにしているような感覚を覚える。 フロア全体を見渡すと、数10台のロボットが同時に稼働している。それぞれが異なる目的地に向かって移動している光景は圧巻だった。ロボットたちは互いに衝突することなく、まるで見えない交通整理システムに従うように整然と動き回る。一台のロボットが棚を持ち上げて移動を開始すると、周囲のロボットは自然に道を譲る。効率的なルートを選択する。

▲暑さ対策のための頭上のスポットクーラーなど、作業負担を減らす工夫も垣間見える
作業員のピッキングステーションでは、作業員は重い棚を移動させる必要がなく、目の前に運ばれてきた商品を効率的にピッキングするだけで済む。この革新的なシステムにより、従来の「人が商品を探しに行く」物流から「商品が人のもとに来る」物流へと根本的に変革を実現した。受領・検品エリアでは、商品棚を持ち上げて移動させる様子や、倉庫作業を効率化して保管機能を強化する実際のオペレーションを目の当たりにした。また、倉庫スタッフの足元に敷かれた疲労軽減マット、暑さ対策のための頭上のスポットクーラーなど、各自の作業負担を減らす工夫も垣間見えた。
また、同センターでは、Amazonとして世界で初めて建屋の壁面(南側)に太陽光発電設備を導入している。屋根部分と駐車・駐輪場と合わせた総発電設備容量は5.5メガワットで、オンサイト型太陽光発電としては国内最大級の規模。これはAmazonのオンサイト型太陽光発電として米国外で最大の発電設備容量だ。また、蓄電容量29メガワット時(MWh)の蓄電池も併設し、雨天・曇天時や夜間でもカーボンフリーエネルギーを活用できる。

▲Amazonとして世界で初めて建屋の壁面(南側)に太陽光発電設備を導入
地中熱利用では国内最大規模となる200本の地中熱交換器を実装し、地下100メートルより安定した熱エネルギーを取り出す空調システムを導入した。これを1階部分の冷房および暖房に利用することで、従来の空調と比べて30%のエネルギー消費量削減を実現している。渡辺氏は「地中熱は寒冷地だけでなく、夏は冷房、冬は暖房として1年を通してメリットを出せる能力を持っている」と説明する。
ロボットが商品棚を持ち上げて移動するAmazon Roboticsについて、渡辺氏は「Amazonロボティックスという自動倉庫のシステムは、働きやすい職場を作るとともに、配送スピードの観点でも貢献している」と話す。同センターでは1900万個の商品を保管可能で、1日当たりの最大入出荷数は60万個以上となる。東海地方の顧客にとって、より多くの商品が当日配送で購入できるようになる。
渡辺氏は配送スピードについて「他社との競争ではなく、お客様の近くにできる限り多くの商品を取りそろえることで、スピードの改善を体感してもらえる」と強調。また、「需要予測や各地域で売れている商品の種類、数というデータを全て持っており、それに基づいて新しいセンターを建てる判断をしている」と説明した。
働く環境面では、自然光を多く取り入れた設計を採用し、カフェテリア、マザーズルーム(搾乳室)やプレイヤーズルーム(礼拝室)、バリアフリー対応のお手洗いを備えている。カフェテリアでは温かい食事を提供し、名古屋メシなどの地域メニューも用意している。施設内で野菜の栽培も行っており、働く人々の心身の健康と包括性に配慮した作りとなっている。
渡辺氏は従業員の採用について「さまざまな方に働いていただきたく、働きにくさというバリアを一つ一つ取り除くことが大事だ。ロボットを使うことで重労働をなくし、年配の方や女性の方でも仕事ができる環境になる」と述べた。また、カフェテリアについては「働いている方々から温かいものを食べたいという声があり、それを満たすことで非常に喜んでいただける。美味しい食事は働く方のエネルギー源となり、働きやすさにもつながる」と説明した。

▲カフェテリアには格安かつ充実のメニューがいっぱい
同センターでは、職場の安全・衛生管理者、商品の品質管理者、設備の保全管理者、テクノロジーを使って商品のピッキング・梱包・出荷作業などを担うポジションなど、さまざまな職種で数千の働く機会を創出する。物流施設などでの職務経験のない方も含め、あらゆる経歴の方が活躍できる場を用意し、定期的なトレーニングやスキルアップ機会の提供を通して、働く方々が学び、成長し続けられる環境を整えている。
地域社会に向けた取り組みとして、同センターは名古屋市より津波避難ビル(津波に対する指定緊急避難場所)の指定を受けている。津波発生の恐れがある場合には、地域住民が一時的に避難することを想定している。また、敷地北側の一部を最寄り駅である荒子川公園駅からの歩行者用通路として一般開放するなど、地域住民に配慮した計画としている。
渡辺氏は最後に、「可動部を作業者の安全を考慮して上部に配置し、労働災害の防止を図るなど、従業員が安心して働ける環境づくりに向けて、アマゾンは継続的な改善に努めている」と述べ、同社の安全への取り組みを強調した。
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