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超高密度のRFIDタグ試作、青学大環境電磁光学研

2020年11月18日 (水)

(出所:青山学院大学)

サービス・商品青山学院大学は18日、環境電磁工学研究所の橋本修所長(理工学部電気電子工学科教授)と須賀良介研究員(理工学部電気電子工学科助教)らが、超高密度化の無線識別(RFID)タグの試作に成功した、と発表した。銅箔を用いて電波を効率よく反射するパターンを設計し、面積0.676平方センチ(長さ13ミリ×幅5.2ミリ)で、10ビット(1024)の情報量のデータを書き込めるという。

読み取る周波数は超広帯域無線(UWB)ハイバンド帯で、7・25ギガヘルツから10・25ギガヘルツの周波数帯にあわせて、銅箔にそれぞれの周波数で電波を効率よく反射するよう電磁波シミュレーション技術を駆使し、長さや幅を設計したスリットを施した。読み取り機(リーダー)側で照射する電波の周波数を変化させることで、10ビットの反射波(情報)を一瞬で読み取ることができる。

反射波がリーダーに戻る「反射あり」の場合は「1」、戻らない(反射なし)場合には「0」という仕組みで情報を識別する。高密度化達成には、隣り合うスリット同士の相互干渉を抑える必要があるが、橋本教授らはスリット間隔や上下のスリット間にさらに左右の短いスリットを配置することで、相互干渉を抑えた。

試作したタグに電波を照射して、反射波の測定を行ったところ、設計通りUWB帯域周波数内に10の反射ピークを確認。さらに高ビット化して20ビットの情報を書き込める超高密度タグのシミュレーション結果を確認した。

この超高密度化RFタグにはさまざまな製品の名称や製造日などの情報を書き込むことが可能。今後は「使い捨て」で利用できるようにするため、製造メーカーとの共同研究に期待を寄せるが、「試作したRFタグを印刷技術を用いて紙の材料に導電性インクなどでパターン形成をする」方法で安価に製造できる可能性がある、としている。

まだ課題も多いRFIDの普及

RFID(いわゆるICタグ)では、既存JANにシリアル番号が付加されるために、商品や在庫個々の情報量が飛躍的に増加して、さまざまな活用方法が想定されている。しかしながら、夢のような利便や機能性が広く享受できるようになるには、まだ課題も多い。

たとえば、干渉防止措置がないままのデフォルト状態では、関西エリアでいうバーコードの「ニナキ」にあたるダブルカウントが、カートン内やパレット上にある全品に及ぶ可能性がある。しかも一瞬で音もなく感知するので、作業者の手許ではコントロールできない。画面上に現れるコード末尾のシリアル番号か検知時間以外に、それを確認する方法がない。

10万個の棚卸後に、総数の違和感からチェックする場合、数字記号羅列の10万行をログ時間か数桁のシリアル番号の重複から抽出する。シリアルが品番内に付加存在するということは、在庫ピース数と検知行数が同じになるということなのだ。

従って、干渉防止装置だけでなく、重複抽出を自動で行う・一定時間内の重複を作業時にエラーとして視覚・聴覚に訴えかける、などの水際対策は現状のバーコード運用よりも更に重要性が増す。もちろんだが、種々の仕組みも全部自前でカスタマイズする必要がある。

導入にあたっては、その現状認識が不可欠なのだということも指摘しておきたい。(企画編集委員・永田利紀)