ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

貨物船と掃海艇の衝突事故、思い込みや居眠り関与

2020年12月20日 (日)

▲掃海艇「のとじま」の損傷か所(出所:運輸安全委員会)

調査・データ運輸安全委員会はこのほど、2019年6月26日に発生した貨物船「ジェイケイIII」と海上自衛隊の掃海艇「のとじま」の衝突事故について、両船の思い込みが主な原因で、互いに無線通信でコミュニケーションをとらなかったことや、「のとじま」の艇長が当時居眠り状態にあったことが事故発生に関与した可能性があるとの報告書を公表した。

この事故は、事故当日の23時55分ごろ、広島県三原市佐木島西方沖の狭い水道を北東に進んでいた「ジェイケイIII」と南南西に進んでいた「のとじま」が衝突したもので、事故による死傷者はなかったが、両船ともに損傷した。

▲貨物船「ジェイケイIII」(出所:運輸安全委員会)

運輸安全委員会が推定した直接原因は、ジェイケイIIIの航海士が、これまで同水道を航行してきた経験に基づき、「左舷対左舷」で通過するつもりで中央付近を進んでいたが、対向するのとじまの当直士官が左舷対左舷で通過することに不安を感じて「右舷対右舷」で通過することとし、互いに対向船が針路を変えるだろうと思い込んでいたこと。海上衝突予防法では、狭い水道において基本的に右側端を航行することが定められているが、「安全であり、かつ、実行に適する限り」という条件が付く。

このほか報告書では、互いに無線通信を用いて意思を確認していれば事故を防げた可能性を指摘しているほか、事故当時「のとじま」の艇長が疲労による居眠り状態にあって、当直士官の判断に対して適切に指導していなかったことが事故に関与した可能性を挙げている。

事故後、貨物船側は(1)狭水道の右側航行の厳守(2)早期機関停止による危機回避(3)双方接近した際の右舷回避の厳守(4)見合い状態となった際のVHFによる通信(5)AISの活用――を周知徹底したという。

▲A船:ジェイケイIII、B船:のとじま(出所:運輸安全委員会)