話題コロナ禍に明け暮れた印象の2020年だったが、物流業界では前向きで期待値の高いニュースも数多くあった。特に春先から試行が始まり、今秋恒久化されたタクシーによる有償貨物運送(いくつかの前提条件あり)などはその最たるものだ。いわゆる貨客分離という「運送と旅客」を厳密に分離する厚く高い壁に、いくつかの「相互往来」できる開口部が設けられた。
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タクシーによる貨物運送事業の試行開始は誰もが理解納得できる趣旨だった。コロナ禍の混迷が続く中での、規制緩和による柔軟運用には好感が持てた。旅客→貨物だけにとどまらず、その逆方向からの新しいプランや乗り入れが次々に発表されることを期待している。
正式に認められた入口を通り、壁の向こうからやってくる事業者の顔ぶれは多岐にわたる。そしてまだまだ増え続けるに違いない。
今までのルートを大幅に短縮したり、経由地をとばしたり、別ルートを構築したり――などの創意工夫は、時として供給側の起死回生につながるかもしれない。各案に共通するのは、需要側にいる販売者や消費者に益多い中身であること――そもそも発想の起点がそれである。
発信時には狭く小さな情報だったはずが、伝播して遠くに達するほど幅が拡がって広大なスペースを駆け巡る新案となる。そのさまは陸上競技の投擲(とうてき)種目の円盤投げやハンマー投げのフィールドを連想させる。
貨客混載の進展にとって、投じられる新案の着地点の面積が大きいことは好材料だ。思いもしない来訪者が小さな門をくぐりぬけて、広大な市場で腕を振るう。他所からやってきた新参者たちの腕力が、固まっていた価値観や思い込みを打ち砕き、そのつぶては生活者への便利でありがたいギフトとなる。今回のニュースはそんな期待を抱かせてくれる。(企画編集委員・永田利紀)