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解説

タクシー配送、まずは規制緩和へのロードマップを

2020年11月24日 (火)

(イメージ画像)

話題本年10月から恒久化されたタクシーによる有償貨物運送に進展があった。現在確認できている情報は、(1)トランクだけではなく後部座席にも荷物を積んでよい(2)積載重量が乗車定員数×20キロまで可(3)対象貨物は「原材料を含む食品・飲料全般」――の3点。

これらの是非を各ステークホルダーの視点で考察する前に、まずは議論の起点としての約束事を確認しておきたい。それは制度設計の趣旨とそれに則った実案作成から、試行と改変を経ての最終形へ至るまでの道筋や時系列の情報をあまねく公開するというものだ。

しかし「タクシーの外装のまま、200キロまで配達可能な貨物専用便が運行する可能性」の是非や、(3)にある「原材料」が具体的に何を指すのかなど、重要なポイントが広く報らされていない。しかもすでに段階的に許可され、運用も開始されている。

この事案が特例措置として試行された直後の5月に掲載したコラム記事(https://www.logi-today.com/376129)の最後は、「緊急時の生活者サポートとして試行された時限緩和ではあるが、延長措置を経ての正式な規制改変となる可能性が非常に高い。本件は、今後も継続注視し、適宜の情報分析と解説を試みたいと思う」と締めくくっていた。いわば読者との約束をしたわけだが、結果的には適宜となっていない。なぜ情報発信できていないのか。

その理由は、約束事であるロードマップの作成と開示が未だ行われていないからだと考えている。

■緊急措置という初動は理解
コロナ禍で業績低迷する飲食店やタクシー事業者の緊急救済策という、ことの始まりは誰もが理解している。そして先行き不透明な現状を考慮し、運用上の大きな問題もないゆえに、恒久化に踏み切った経緯にもうなずけるだろう。

しかし、試行案そのままの横滑り的な正式採用にとどまらず、さらなる追加容認や緩和措置が盛り込まれているなら、それは事前に広報すべきだし、「内々」「個々」「いきなり」といった感が否めない情報開示の手順にも注文をつけたくなる。

水面下では当事者や近接業界との下打ち合わせがなされていたのだろうが、制度の直接関与者である事業者だけではなく、全コストの負担者である消費者や、貨物の発送者である荷主への事前告知や制度利用可能となるまでの工程表が不開示であったことは残念だ。

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■混乱や誤解を招かぬためにも
高く厚い壁としてそびえ続けた「貨客分離」が、消費者や事業者の営みの変化に応じて形を変えてゆくことに異を唱える者などいないと信じる。その手順に偏りや拙速の芽が生じることは許されないし、そのためには万人の目に触れる状態での議論や試行結果の検証が不可欠だ。

ラストワンマイルと称されて久しい最終配達のサービス市場。そのプレイヤーの顔ぶれが多彩になるほど、消費者利益の増加につながるのは明らかだし、動き出した流れはもはや変えられない。規制緩和への好機に混乱や不調和は避けたい。だからこそ進捗予定を可視化しておかなければならない。

「少しでもよくなれば」はすべての消費者の願いだ。それに報いるために何を考え、何を決め、どう報せるかが、事業者と行政の最優先事項であり、われわれ物流業界の各社各人も例外ではない。本年春以降から現在、そして将来への「タクシー事業者による貨物配達業務」の実像と最終形を描いて、時系列が表記されたロードマップを作成する。まずはそこからではないだろうか。(企画編集委員・永田利紀)

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