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現場あたりの運搬220回削減

清水建設、都心現場の物流改革に本格着手

2021年3月16日 (火)

荷主清水建設は、4月をめどに都心建築工事現場の物流改革に乗り出す。日立物流の協力を得て、同社と協力会社の物流関連コストを削減する建設物流システム「シミズ・スマート・ロジ」を東京支店傘下の現場を対象に展開する。

まずは大型現場を含む10現場と協力会社19社が参加して改革プロジェクトを立ち上げ、段階的に対象現場と対象資材を拡大、2年以内に東京支店で本格運用を目指す。

同社が都心建築工事現場の物流改革に取り組むのは、大都市圏の建築工事現場に資材を仮り置きできるスペースが少なく、特に「仕上工事段階に入ると工程を勘案しながら建材メーカーを含む多くの協力会社が少量ずつ資材を現場に搬入」することになり、物流効率が低下してコスト負担が増加してしまう現状の改善が狙い。

少量ずつ搬入することで運搬車両の積載能力が活かしきれなくなり、結果として生じるムダな物流コストが資材のコスト増の一因になっているほか、協力会社も現場の工程を優先して生産ラインを稼働させるため、稼働効率が低下するという課題がある。また、現場でも搬入資材の仮置などに伴う荷捌き対応にかかる手間が大きくなっている。

こうした課題に対し、同社が打ち出した「シミズ・スマート・ロジ」は、協力会社・現場間の物流に中間物流拠点「ロジセンター」を介在させ、現場はウェブシステム上に資材のリクエスト情報(数量と納入期間)を公開。この情報をもとに協力会社は中間物流拠点へ、物流拠点は現場へ資材運搬を効率的に行う仕組みとなっている。

(出所:清水建設)

第一弾として、日立物流の守谷倉庫の一部(2300平方メートル)をロジセンターとし、日立物流と共同で同センターを運営する。当初は物流コストの削減余地が大きいサッシ、スチールドア、OAフロアなど14種を対象とする。

これにより、協力会社は現場のリクエスト情報を満たせば自社の都合で生産ラインを効率的に稼働させることができるようになるほか、自社のタイミングで資材を運搬車両に満載してロジセンターに運搬することが可能になる。ロジセンターはリクエスト情報をもとに、異なる資材を満載して一つの現場や複数の現場に対して必要な資材を満載して運搬することで、積載容量のムダを省くことができる。

これらの取り組みによる削減効果は大きく、同社の試算では協力会社側は運搬費を15%、製作費を3%、現場は荷捌きに関わる労務費を5%——をそれぞれ削減できる見込み。また10現場、19社の参加を1年間継続した場合、10トンと4トン積みトラックによる運搬を220回分削減できるという。さらに、センターを輸入資材の一時保管場所としても活用すれことにより、為替レートが有利な時期にコンテナ満載で資材を輸入するなど、多角的な活用が期待できる。