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論説/やるなら徹底的に、例えばETCに一本化

2021年4月9日 (金)

話題大型車両の駐車場問題は、主要一般道や高道路速を含む自動車専用道路では喫緊の課題として議論されている。素人考えでは「駐車場の拡張によって駐車スペースを増やせばよいのでは?」と思うのだが、事はそんなに単純ではないらしい。(企画編集委員・永田利紀)

NEXCOの駐車場予約実験、5月から一部有料化(21年4月8日掲載)
https://www.logi-today.com/429059

スマートインターチェンジの積極的な増設によって、既存パーキングエリアやサービスエリアの隣地もしくは近接地に大型車両専用駐車スペースを設けるなど、難しい問題がいくつもあるのだとか。大きな予算確保や、近隣住民との丁寧で如才ない協議も必要なのだろう。

ETCへの一元化の利便性

(イメージ画像)

大型車両の駐車場確保のための有料化導入については、一定の理解を得られると思う。しかしその決済手段の現地個別対応は、できるものなら避けてもらいたいと言いたい。

わざわざドライバーにクレジットカード決済をさせずとも、ETCに連動させれば良いのではないか、というのが素朴な疑問だ。ひょっとしてその仕組みも現在進行形で開発中なのであれば、この件は杞憂で蛇足となる旨、悪しからず書き加えておく。

ETC連動決済ならば、当該車両がインターチェンジから高速道路に入った段階で、すでに駐車場の予約は完了していることになる。企業所属のドライバーなら、運行管理部署が休憩や仮眠規定を踏まえて、ルート上で適当なパーキングエリアを予約するだろうし、その決済も「往復の有料行程のほぼ全て」でETC適用できる。

ドライバーと運行管理者と事務処理者にとって、業務が一元化できる利便性はありがたいのではないかと思う次第だが、運行管理の実務者諸氏はいかがお感じになっているのだろうか。

(イメージ画像)

ETCカードに紐づいたクレジットカードもしくはスマートフォンなどによる電子決済で、高速道路の各種施設を利用できることも利便性が高い。説明するまでもなく、運行業務での全費用と食事や休憩に要する諸費用までを、会社が一部負担したり全額負担したりする際に、事後の立替出金を清算する手間が省けるからだ。

一部負担の場合は、給与から天引きする仕組みを採用すればよいだろうし、紙ベースではなくウェブ上で各自が確認・修正・申請したりできるなら、その効率性は従前に比して格段に上がる。

高速道路の施設内決済の一元化は、運送事業者にとって有用で、事務省力化に寄与することは間違いなさそうだ。あくまで「会社側にとっては」のハナシであるのかもしれないが。

業務内・業務外の線引き

一方で、ドライバー側にとってETC連動型の経費決済はどのような長短があるのだろうか。官庁と業界団体による法整備や積極的行政指導や啓蒙活動により、まだまだ不十分とはいえ職業ドライバーの労務環境は向上しつつある。

一定時間を超える連続運転の禁止と、充分な休憩や睡眠時間の確保、休日ローテーションの厳守。基本的な順守項目以外にも、さまざまな施策が事業者ごとになされている。しかしながら、報告されている額面通りの行動が徹底されているのか、判定は難しい。

なぜならドライブレコーダーなどの媒体記録以外の行動管理は過剰干渉であり、個人の領域への侵入とも受け取られかねない。従って、その部分を記録内で暗転させなければならない限りは、あくまでドライバー自身の自己申告と、会社側の分析や所見によってしか適正労務の順守は判定できない。

それは運送業務に限ったことではなく、庫内労働でも同様であるし、他業種に置き換えても全く同類同質の議論がなされて然りだ。

声を挙げることから

(イメージ画像)

つまりは現場と管理側の力関係や慣例化による部分が大きい、という企業体質もしくは業界体質に行き着くことになるわけだが、それを是正すべく、多くの制度や法制が次々に導入されてきた。行政や事業者の問題よりも、ドライバー自身の意識改変や積極的な発言がなければならないことも、必須条件となる。

虐げられ、我慢し、耐えている、といったドライバーの労働実態が火急の改善課題だと欲するならば、ドライバー自身も声を挙げて、正確な現状説明と冷静な議論に参加する必要がある。内心の叫びや、プライベートな場所での愚痴や不満の吐露だけでは、意見や主張として会社や業界という「おおやけ」には届かないし、認められない。

労働は使用者と労働者が交わす約束事から成り立っている。今までは言葉や文書で、相対や密室で完結していた約束事の明細が、今後は開かれて明瞭となる。ルール通りの運用を迫られるのは労使双方であるし、その監視や判定する第三者の目も行き届きやすくなるばかりだ。

どうせやるなら徹底的に

高速道路の大型車両専用スペースの一部有料化――。そもそも発案の起点は「大型車両の駐車スペース不足によるドライバーの休息時間確保が不安定となっている」ことだったはずだ。

つまりは労務上のエラーが危惧されるがゆえの議論だった。もちろん労働環境の健全化は、雇用維持の安定化と求人活動の基礎条件整備まで見据えての施策に不可欠なものだ。

ならば、利便と効率を同時に満たすさまざまなシステムや利器を活用しない手はない。事務の簡素化や効率化は、明朗な業務管理とコスト削減に直結する。

さらには、人依存型の「あれこれ苦心して」「経験的に」「毎度苦労している」などの実態が大きく消除できるだろうし、そういう事例が増えることこそが業界関係者の本懐ではなかろうか。

新しいプランの提案は大歓迎だ。皆で知恵や工夫を出し続ければ、諸問題は必ず解決や改善の跡を残す。誰かの良案や着眼をもとに、周囲が意見や補足や加工案を持ち寄って議論することを継続してもらいたいと切望する。どうせやるなら徹底的に追求するほうが実り多いのではないだろうか。