国内ENEOSとトヨタ自動車は10日、静岡県裾野市においてトヨタ自動車が建設を進める「ウーブン・シティ」での水素エネルギー利活用について、具体的な検討を進めることで基本合意した。トヨタの子会社でモビリティの開発を担うウーブン・プラネット・ホールディングスとともに、水素のサプライチェーンに関する実証実験などを実施する。
共同で検討を進めるのは、(1)ENEOSによるウーブン・シティ近隣での水素ステーションの建設・運営(2)水素ステーションに設置した水電解装置による再生可能エネルギー由来水素の製造や、ウーブン・シティへの供給など(3)ウーブン・シティと近隣における物流車両の燃料電池化の推進や水素需給管理システムの構築など(4)水素供給に関する先端技術研究──の4項目。
この組み合わせが最強
発表はウーブン・シティがらみの内容だが、読んだ誰もが「ENEOSとトヨタの組合せで水素ステーションの普及が前進すれば、次世代エネルギー供給のインフラ整備は盤石となる」といった感想を抱いたのではないだろうか。
個人的には、EV(電気自動車)よりもFCV(燃料電池自動車)により大きな可能性を感じているからかもしれないが、水素エネルギーの量産とその製造過程での二酸化炭素ガス排出低減またはゼロ化を並行して推進できれば、あとの課題は車両小型化と価格抑制、そして何よりも水素ステーションの設置数の確保だと思う。
そうなると一から準備する参入組よりも、最大規模にして最多拠点数を誇るENEOSが、本格的な水素ステーションの増加において、大きなアドバンテージを持っていることは疑いようがない。特に、巡行距離に不安を抱える現在のパワートレインが次世代モデルを迎えるまでの間はなおさらで、一定以上の燃料供給場所を確保することで、陸運での採用に拍車がかかる。
自動化や半自動化の進む走行補助機能の進化と相まって、次世代ビークルの理想形が具体的に描かれつつある。現状では、車両の動力にとどまらず住宅や設備機器にまで及んで提案するトヨタの独壇場だが、その打破に名乗りを上げる勢力の登場を心待ちにしている。(企画編集委員 永田利紀)