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シェア1位のトラック予約受付サービスと連携するサービスが続々と登場

Hacobu、MOVOバースを核に「SCの全体最適化」

2021年7月20日 (火)

Hacobuの田口部長

話題Hacobu(ハコブ、東京都港区)が提供するトラック予約受付サービス「MOVO Berth」(ムーボ・バース)は、同社が提供する物流情報プラットフォーム「MOVO」の中核アプリで、国内では圧倒的なシェアと知名度を誇る。しかし同社は、継続的なMOVOバースの機能強化に努めつつも、近年はアプリ単体を押し出すだけではなく、「物流DX」を実現するアプリの集合体としてのMOVOを訴求。顧客のサプライチェーン全体の最適化を目指す方向に舵を切っている。

MOVOは、2018年のMOVOバースのリリースを経て、今月には配車管理サービス「MOVO Dispatch」(ムーボ・ディスパッチ)を発表するなど、現在も精力的なサービスの拡大が続いている。MOVOの物流情報の流れの上流に位置する、昨年に発表した配送案件管理サービス「MOVO Vista」(ムーボ・ヴィスタ)や、動態管理サービス「MOVO Fleet」(ムーボ・フリート)も含めた相乗効果を、さらに高める考えだ。

MOVOにおける情報の流れのイメージ(クリックで拡大)

MOVOバースを核に広がりを見せるMOVOだが、そのけん引力となっているものは何なのか。MOVOバースの導入拠点が大きく増加しているのは「サプライチェーンの上流から下流まで、複数のアプリケーションでカバーできているから」と語る営業本部第1営業部の田口智士部長に、MOVOバースの現在と、MOVOの今後のビジョンについて話を聞いた。(編集部)

──MOVOバースの導入状況と、トラック予約受付サービス市場に対する見解は

田口智士氏(以下敬称略) 昨年8月にミック経済研究所(同中央区)がトラック予約受付サービスを提供する13社を対象に実施した市場調査で、MOVOバースの導入拠点ベースのシェアは56%に達し、2位の10%に大差をつけた。

市場調査の結果を示す円グラフ

小売の物流拠点や営業所、出荷元となるメーカーの工場など、当時は2800拠点がMOVOバースを利用していたが、利用拠点数はその後も大きく増加し、現在は6000拠点に上る。

日本国内に物流拠点は3万か所あると言われているので、この数字は、トラック予約受付サービスを導入する可能性のある拠点数の20%に満たない。市場はまだまだホワイトスペースが大きいと言えるだろう。ここ1、2年で競合するサービスが増えてきたが、一方でMOVOバースの導入の速度も上がっており、社会からの強いニーズを感じている。

──市場シェア1位を獲得している理由を、どのように考えているか

田口 営業担当が自社のカスタマーサクセス部門や開発部門と緊密に連携していることが大きく、現場のユーザーの声や要望を共有し、課題に対して迅速に対応できる体制を構築した結果、既存の契約先の複数の拠点に導入いただいている。

およそ2週間に1度の頻度で、新機能の提供や機能の改善を続けていることも強みだと思う。要望が多い課題から手を打っているため、現場の声はおおむね好評だ。顧客企業が実施しているアンケートによれば、ドライバーや庫内作業員などの7割から8割程度が、MOVOバースを好意的に評価している。

また、MOVOバースに蓄積したデータを分析し、現場の改善提案を行うこともしている。これらにより、解約率は非常に低い数字になっている。

──現在の導入拡大をけん引する要素は

田口 荷待ち時間の短縮などの「個別最適」だけでなく、顧客企業の物流の「全体最適」を実現する大きな目標を設定し、MOVOのさまざまなサービスを活用して達成する提案を進めていることが奏功している。そのようなアプローチの変化により、ここ数か月では複数拠点に一括で導入していただくケースが多くなっている。

サプライチェーンの全体最適化のイメージ(クリックで拡大)

トラック予約受付サービスのMOVOバースが、配送案件管理サービスのMOVOヴィスタなど複数のサービスと連携し、「サプライチェーンの上流から下流まで、データの見える化が実現することで、お客様の物流の課題を大きく改善できる」というメッセージは共感いただけるケースが多い。研究開発費が少なく済む後発企業は、料金面で優位に立つことができるが、この全体最適の提案ができるのは当社だけではないかと感じている。

──今後の導入拡大のカギとなるものは

田口 やはり運送会社のドライバーだと思う。最近では競合するサービスも増え、トラック予約受付サービスに心理的な壁を感じる人は減ってきているから、この波に乗りMOVOバースの利便性を伝えていきたい。日本国内に80万人いるドライバーのうちの2割が、すでにMOVOバースに接した経験があることが分かっているが、残りの8割への訴求がカギになると思う。

インタビューに応える田口氏

そのためにはさまざまな機能強化に加えて、このほどリリースしたMOVOディスパッチなど、運送会社に寄り添ったサービスの開発にも引き続き力を入れる。MOVOディスパッチは、運送会社がホワイトボードなどで作成している配車表のデジタル版といえるもので、ドライバーや車両の情報なども「見える化」する。積載率や稼働率の向上に大きく寄与するだろう。

ただし我々は、導入企業にとってあくまでも「物流DX実現のパートナー」であり続けることを強調したい。サプライチェーンには多くのプレーヤーが存在しており、工場や倉庫などの個別のオペレーションを最適化しているだけでは、何も始まらない。物流業界全体のリソースの状況を見極めて、最適化する必要があると思う。

──MOVOバースの導入拠点数が多い業種や積荷は

田口 顧客にはメーカーや小売り企業などの物流を受託している3PLの会社が多いが、特定の業種や積荷に強いということはなく、荷待ち時間が長い業種、つまり課題が多い業種から、需要が生まれてきている。

MOVOバースのバース表(クリックで拡大)

国土交通省などが重点的な取り組みを求めている4業種(加工食品、建設資材、家庭紙、洋紙・板紙)以外にも、危険物輸送用車両など数少ない車両を効率的に利用しなくてはいけない、化学業界などでも利用されている。

──MOVOバースとMOVOの今後の目標は

田口 MOVOバースの導入拠点数については、KPI(重要業績評価指標)として明確な目標値を定めているわけではない。ただ、1拠点でも多く導入していただければ、我々が掲げる「運ぶを最適化する」というミッションの実現に近づく。サプライチェーン全体の中でMOVOを「共通言語化」することが、長期的な目標だ。

最大の課題は物流関係者全員のマインドセットの転換で、やはり個別最適の部分だけを競うのではなく、サプライチェーン全体の最適化を考えなくてはいけない。その中では質の高い、一元化された物流情報が必要となる。MOVOバースだけで全てを得られるわけではないから、MOVOディスパッチなどさまざまなアプリの情報をひもづけて可視化し、得られたビッグデータを分析・活用していきたい。

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