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野村不の物流自動化支援プログラム、好調な出発

2021年8月10日 (火)

話題野村不動産がことし4月に開始した、物流業務の自動化支援のためのオープンイノベーションプログラム「Techrum」(テクラム)が、好調な滑り出しを見せている。物流テック企業の参画を募り、その技術開発を支援するとともに、企業同士の連携も促して、荷主などの課題の解決に向けた新たなソリューションの開発を目指す試みだ。物流DX(デジタルトランスフォーメーション)に関心を抱くものの、導入コスト負担や現場レイアウト変更などに直面して断念する企業も少なくない中、山積する課題を抱える物流現場へいかに普及させていくかが腕の見せどころだ。

責任者を務める、同社物流事業部事業企画課長の網晃一氏によれば、3月の発表時点では10社程度が参画の意思を示していたが、その後も順調に参画企業が増加。現在は20社を超えているという。

網晃一氏(3月の発表会見時)

千葉県習志野市の物流施設「Landport(ランドポート)習志野」内の一角に開設した、ロボティクスやICT、搬送機器などの共同開発・実証拠点「習志野PoC Hub(ハブ)」については、現在の床面積2645平方メートルを、年内にも2倍の5290平方メートルに拡張する。

習志野PoCハブは、電気料金などの実費分を除き、無償で参画企業に提供しているもので、3月時点では拡張の時期を明言していなかったが、参画企業数の増加を受けた形だ。すでに各社が、順次機器の導入や設置、稼働テストなどを開始しており、野村不動産は今秋にも、参画企業などの詳細について発表する見通しを示している。

テクラム導入の動機は「物流インフラ破綻への危機感」

「Landport 習志野」の外観(出所:野村不動産)

網氏は本誌に対して、野村不動産が物流施設開発への投資を加速し、すでに開発・運用棟数の累計は40棟近くに上る一方で、急増する物流需要と労働人口の減少のアンバランスに懸念を抱いていることを説明。「このままでは重要なインフラである物流が破綻しかねない。いかに持続性を維持するかが社会的課題になっている」と述べ、テクラムによる物流業務の自動化に向けたイノベーションの創出に期待を示した。

野村不動産はテクラムから生まれた自動化ソリューションなどを、早期に荷主や3PL企業などに提案したい考えだ。その際にはレンタルによる提供などで、自動化への投資のハードルを下げ、より多くの企業に活用を促したいとしている。また、倉庫への標準設置により、倉庫と自動化設備を同時に提案するなど、さまざまな形での提案を視野に入れるという。その戦略は、物流現場に変革をもたらすことができるか。今後の動向を注視していきたい。(編集部・行松孝純)