荷主首都圏を地盤にディスカウントスーパーを展開するオーケー(横浜市西区)は3日、関西を地盤とする中堅食品スーパーの関西スーパーマーケットに対する株式公開買い付け(TOB)による買収方針を発表した。関西スーパーは8月31日、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングの傘下に入ると発表。関西スーパーマーケットをめぐる争奪戦の様相となった。
消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、EC(電子商取引)サービスの普及が一段と進むなかで、スーパー業界は競争対象が広がり、生き残りをかけた事業戦略の構築に躍起だ。今回の関西スーパーマーケットをめぐる争奪戦を契機として、スーパーをはじめとする小売業の再編が加速する可能性もある。
オーケーはことし6月、関西スーパーに対し1株あたり2250円でTOBの提案を行ったが、「実質的な協議の場は設けられなかった」と説明。オーケーが提示したTOB価格は、関西スーパーマーケットの上場来高値と同値で、9月2日終値よりも64%高く、大幅なプレミアムを上乗せした設定と言える。オーケーは関西スーパーの株式の7%を保有している。
関西スーパーマーケットは8月31日、筆頭株主で関西地盤のエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングの傘下に入ると発表している。オーケーは、「関西スーパーマーケットの株主利益の最大化の観点から、公正に比較検討いただけたのか懸念している」と表明。今後開催される関西スーパーマーケットの臨時株主総会ではH2Oグループとの経営統合にかかる議案に反対票を投じる予定であることを明言した。なお、敵対的な公開買い付けを行う考えはないという。
関西スーパーマーケットは3日午後、「H2Oグループとの経営統合を撤回する意向はございません」とのコメントを発表した。
小売再編は物流ビジネス変革の機会だ
関西スーパーマーケットをめぐる争奪戦は、小売業界の再編の呼び水になる可能性が出てきた。新型コロナウイルス感染症の拡大は消費スタイルの変革を一気に加速させた。その結果として多くの業界でビジネスモデルの見直しを迫られている。その代表格が、スーパーマーケット業界だろう。
スーパーマーケット業界の最大の脅威は、消費者が「店頭で商品を買わなくなる」ことだ。ECサービスはもはや、スーパーマーケットとほぼ同水準の価格設定と商品ラインアップを実現している。アフターコロナは少子高齢化と在宅生活の定着が進む時代であることを考えると、スーパーマーケットは規模を大きくしてコスト削減に取り組むしかなくなる。
オーケーは、関西スーパーマーケットの買収提案で提示しているシナジー効果について「物流効率化」を挙げている。オーケーが関東一円で展開する食品物流センターの開発ノウハウを活、関西スーパーマーケットが検討中の新物流センターにも水平展開することで、年間を通じた低価格販売の実現に向けた物流基盤の構築を進めるとしている。
物流関連業界を起点に小売再編のあり方を考える時には、こうした拠点施設の有効活用とコスト削減の2軸をポイントとする必要があるだろう。小売業界にとって、物流は小売業に不可欠な業務であるとともに、再編メリットを最も出しやすい領域でもあるはずだ。小売業界の再編が再燃する可能性も出てきた今こそ、物流事業者は強みとするサービスを提示する好機と捉えるべきではないだろうか。そこに新ビジネス創出のヒントもある。(編集部・清水直樹)