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安田倉庫が南信貨物自動車買収、物流網強化

2021年10月8日 (金)

M&A安田倉庫は8日、南信貨物自動車(長野県松本市)の全株式を取得し、子会社化すると発表した。南信貨物自動車の傘下企業を含めた売上高は73.6億円(2021年3月期)で、南信貨物自動車の丸山光彦社長ら個人株主14人が所有する全株式を11月1日付で取得する。

南信貨物自動車は長野県全域に拠点を展開し、甲信地区から関東圏、中京地区までを結ぶネットワークを構築している。保有車両は大型から小型、冷蔵・冷凍などの300台を超え、一時保管・荷役・流通加工作業の実績も豊富。

安田倉庫は、南信貨物自動車とネットワークやサービスノウハウを共有することで、物流事業の相乗効果創出を図り、サービスメニューの拡充につなげる。これに伴い、安田倉庫は小泉真吾常務執行役員(安田運輸社長と日本ビジネスロジスティクス社長を兼務)を11月1日付で南信貨物自動車の副社長として派遣する。日本ビジネスロジスティクス社長は辞任する。今回のM&Aにより、安田倉庫の連結売上規模は500億円を超える見通し。

倉庫企業が全国ネットワーク構築に乗り出す意義は決して小さくない

安田倉庫が南信貨物自動車を子会社化する。地盤の長野県を中心とした、関東から中京まで幅広く輸配送ネットワークを展開する地域運送会社を傘下に置くことで、安田倉庫グループの物流網を拡充する。倉庫会社が「倉庫業」に加えて運輸ビジネスの強化に乗り出すことで、物流業界で生き残りを図る動きを象徴する事例と言えるだろう。

倉庫会社と言えば、いわゆる倉庫業務を営むビジネスモデルが主流だった。寄託を受けて顧客の物品を倉庫などで保管する受託事業で、運送業と並んで物流の中核を担う。いわゆる倉庫営業だ。しかし、社会における物流ビジネスへのニーズの多様化や高度化により、サプライチェーンマネジメントのさらなる強化が求められるようになると、倉庫業への要請も大きく変貌した。

とはいえ、倉庫も物流機能を構成する欠かせない要素であることは変わらない。安田倉庫の今回の取り組みは、かつての業種の枠を超えた輸配送ビジネスが誕生する意味で、業界を活性化する材料となるのは間違いない。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う「新しい生活様式」が本格的に広がれば、荷物の多品種化や取扱量の増加への対応が欠かせない。新しい輸配送の発想が求められるなかで、こうしたビジネス連携はさらに広がっていくだろう。こうした柔軟な対応は、物流業界の将来のあり方を考えるうえで、歓迎すべきことだと思う。(編集部・清水直樹)