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沖電気、現場で容易に外観異常判定できる機能提供

2021年11月15日 (月)

荷主沖電気工業は15日、映像AI(人工知能)で物流や製造現場の検査工程を省力化・自動化する「外観異常判定システム」について、Google Cloudの高速かつ高精度の品質管理を目的とした専用ソリューション「Visual Inspection(ビジュアル・インスペクション) AI」を組み合わせた学習モデルの自動生成機能と生成モデルによる自動判定モデル作成機能を追加したと発表した。AIの専門知識がなくても荷物や製品の外観異常を自律的に検査できるのが特徴。沖電気工業は来春以降に順次、新機能の提供を始める予定だ。

沖電気工業がことし6月に提供を始めた外観異常判定システムは、カメラで撮影した検査対象の部品・製品の高精細映像をAIエッジコンピューターで映像解析することにより、リアルタイムで製品の外観異常を判定する。自動判定モデル作成機能を追加することで、AIの専門知識のない現場でも、容易かつ短期間で外観異常判定システムを導入・運用することが可能となる。

▲Google AIを活用した外観異常判定(出所:沖電気工業)

外観異常判定システムは、傷やへこみなど変動する不良の程度に対応するため、専門のAI技術者による各種パラメーターの組み合わせやモデルチューニングなど生成した学習モデルの精度向上のための作業を定期的に行う必要があった。

沖電気工業はこの問題を解決するため、従来の画像解析エンジンに加えて、Google Cloudの「Visual Inspection AI」と「AutoML」による機械学習を活用した自動判定モデル作成機能を追加。学習モデル設計を自動化することで、運用者にAIの専門知識がなくても、学習モデルを生成することが可能とした。

生成した学習モデルはエッジ端末「AE2100」に実装されるので、製造現場で自律的に外観検査を行い、即座に作業者に結果を通知することが可能。運用中に未知の異常が検出された場合には、運用者が当該画像をユーザー画面に取り込み、各画像の不良箇所にマーキングをしてラベル付けを行うだけで、自動的に学習モデルを生成することができるため、AI技術者がいない現場においても、常に高い判別精度を確保できる。

多様な企業が強みを競う物流現場

荷物や製品の外観を検知する機能が、物流業界をはじめとする各種業界で注目を集めるようになってきた。沖電気工業が開発した外観異常判定システムについて、Googleの品質検証ソリューションを組み合わせた自動判定モデル作成機能を追加した。AIの実用化が、従来は最も人間の「目」と「経験」が信頼されてきた検査業務を劇的に変えようとしている。

(イメージ)

沖電気工業は、物流や製造の現場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)化による業務効率向上を推進する取り組みを加速している。プリンターやATM(現金自動預け払い機)などの主力製品の開発で磨いた技術を成長領域に水平展開するイノベーション戦略を推進。充填領域の一つに「物流」を掲げる。配送計画自動化システムを2022年度に実用化する計画だが、今回の取り組みも物流現場の業務効率・最適化に大きく貢献する取り組みと言えるだろう。

とはいえ、荷物や製品の外観検知を支援するシステムは、既にセンサーメーカーをはじめとする多様な業界の企業が相次いで参入を進めており、まさに加熱した市場となってきている。検知の精度だけではもはや差別化が難しいところまでシステムの完成度は全体的に高まっている。

沖電気工業はGoogleと連携することで、こうした参入の壁を乗り越えようとしている。物流現場はあらゆる企業が強みを発揮して業務改善につなげるソリューションを開発できる有望な市場を提供する、非常にオープンな市場を生み出していると言える。社会の基盤である物流インフラがそれで活性化され業務効率化につながるのであれば、歓迎すべき動きだと考えるべきだろう。(編集部・清水直樹)