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ヤマト運輸と日野、環境対応型集配業務を実証へ

2021年11月22日 (月)

▲日野デュトロ Z EV(出所:ヤマトホールディングス)

調査・データヤマト運輸(東京都中央区)と日野自動車は22日、日野が開発した超低床・ウォークスルーの小型BEV(二次電池式電気自動車)トラック「日野デュトロ Z EV」を用いた集配業務の実証実験を11月24日から半年間実施すると発表した。「日野デュトロ Z EV」を用いた集配業務の実証実験で、温室効果ガス排出量削減効果や、集配業務における効率性・作業負荷低減の効果などを確認する。

ヤマトが環境対応車による集配業務に本腰を入れることで、宅配業界における脱炭素化の動きが一段と加速しそうだ。

持続可能な物流の実現に向けた温室効果ガス排出量の削減など、環境に配慮した取り組み。ヤマトグループは、2020年1月に発表した経営構造改革プラン「YAMATO NEXT(ヤマトネクスト)100」の長期目標として「2050年CO2排出実質ゼロ」を掲げ、環境に配慮し、かつドライバーにとって実用性の高い低炭素車両の導入を進める。

日野は「日野環境チャレンジ2050」で環境負荷ゼロへのチャレンジを掲げており、21年4月には中間目標となる「日野環境マイルストーン2030」を設定。カーボンニュートラルの実現に向け取り組みを加速している。「日野デュトロ Z EV」など、環境配慮を含む物流最適化に貢献する各種ソリューションの開発・提供に取り組む。

今回の実証実験は、11月24日から22年5月末まで、日野デュトロ Z EV2台を活用。ヤマト運輸の日野日野台センター(東京都日野市)と狭山中央センター(埼玉県狭山市)を会場とする。

日野デュトロ Z EVは、走行時に温室効果ガスを排出せず、環境に配慮した車両で、環境だけでなく、都市部や住宅街での宅配業務の作業効率も考慮した構造が特徴だ。

▲超低床構造で荷室への乗降がスムーズに(出所:ヤマトホールディングス)

コンパクトなため普通免許で運転が可能であるほか、低いヒップポイントで運転席の乗降がスムーズ。ウォークスルー構造で運転席から荷室への移動がしやすく、作業性の向上を図っているほか、超低床構造で荷室への乗降がしやすく、ドライバーの負担を軽減する。市街地走行を想定し、後退時の誤発進抑制装置など必要な先進安全技術を装備する。

「環境」で生き残りを図れるかが問われる、今回の実証実験

ヤマト運輸が、環境対応車による集配態勢の構築を加速する。佐川急便(京都市南区)やSBSグループが電気自動車の導入向けた動きを鮮明にするなかで、具体的な方向性を打ち出せずにいたヤマトが、日野との共同実証実験を契機にどんな戦略を描くのか、注目が集まる。

宅配事業の電気自動車化は、もはや「環境配慮に積極的な姿勢を示すことによる企業価値向上を図る」だけの観点では語れなくなっている。政府による50年までのカーボンニュートラル実現宣言をきっかけに、物流業界でも脱炭素化の機運が一気に高まった。特定の企業によるステークホルダーへの利益提供という狭義な解釈は、既に成立しなくなっているのだ。

こうした事情をビジネスチャンスと捉えるのが、環境対応車両を提供する立場である日野自動車だ。日野が商用車業界で存在感を確保し続けるには、「環境対応」は避けて通れない命題だ。今回の実証実験は、両社が環境対応という新しい土俵で、生き残り図れるかが問われる取り組みと言えそうだ。(編集部・清水直樹)