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ダイアログ方志社長に聞く「WMSの将来像」

倉庫の「概念」の変化に応じて必然的に役割は変わる

2021年11月25日 (木)

話題物流の要としての役目を果たす倉庫。入出庫や流通加工、出荷・配送、在庫管理などあらゆる業務の拠点としての機能を果たすとともに、荷物の出し手から配送先までのあらゆる情報をもとにスムーズな流れを制御する「司令塔」ともいうべき存在だ。

こうしたサプライチェーン・マネジメントが重要さを増す物流現場では、消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染拡大に伴う宅配ニーズの高まりで、物量が急増するとともに荷物の種類の多様化も進み人手不足が露呈するなど、業務効率化が喫緊の課題になっている。さらに、リードタイム短縮や誤配送の抑止など、輸送品質向上の要求は高まるばかりだ。

少子高齢化が急速に進むなかで、こうした現場の課題解決策として注目を集めているのが、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化による業務改善だ。なかでもその代表格とされるのが、倉庫業務の全体をマネジメントするWMS(倉庫管理システム)だ。社会に不可欠なインフラである物流サービスの持続的な成長に向けて、倉庫が果たすべき役割はどう変わるのか。ダイアログ(東京都品川区)の方志嘉孝社長に聞いた。(編集部・清水直樹)

ダイアログWMSの強みは「汎用性」

ダイアログのWMSの強みについて考えた時、最終的にたどり着くキーワードは「汎用性」だ。国内には数えきれないほどの倉庫があるが、それぞれの現場が抱える課題はまさに千差万別であり、将来のあるべき姿も異なる。こうした多様なニーズに対応できる機能、それがWMSに求められる役割だ。

——ダイアログがこだわるWMSの強みは何か。

方志 どんな倉庫でも適用できるシステムである「汎用性」と、外部との接続性を考慮した「柔軟性」、さらに使いやすさを意識した「簡易性」の3点だ。特に重要視しているのが、誰でもどこでも使える究極の汎用性を持つWMSだ。WMSは、それぞれの倉庫を最適な形でマネージメントすることで、作業現場の課題を解決に導くシステムだ。その意味で、汎用性のないWMSは存在し得ないと考えている。

——ローコード化やエクセル仕様など、先進システム「らしからぬ」機能も重視している。

方志 使いやすいシステムでありたいからだ。WMSの機能がどんなに高機能であっても、それを現場で使いこなせない代物であるならシステムとして機能しない。エクセルを使ってデータを集約する仕様も、現場ではまだこうした手法が定着している現状を踏まえたものだ。ダイアログのWMSは、UI(ユーザーインターフェイス)を重視しており、グリッド型で見やすく整理されたスタイルを意識している。

強みを獲得したきっかけは「最初の大失敗」

ダイアログがWMSのあるべき姿として追求する「汎用性」。そのこだわりに到達した背景には、かつての手痛い失敗の経験があるという。裏を返せば、その経験がダイアログのWMSの完成度を高める原動力になったとも言えるのだ。

——ダイアログがWMSの開発に着目したきっかけは。

方志 ITシステム開発の世界で、物流に焦点を絞ったポートフォリオを構築している企業がほとんどなかった2010年ごろ、ある顧客から倉庫内の業務改善にかかる仕事を求められた。それまで縁のなかった倉庫業務について詳しく調べてみると、意外にもきちんと工夫された運営がなされていることが分かった。そこで、私はこう考えた。「ここにITシステムを導入したら、劇的に作業が効率化できるのではないか」と。この発想が、倉庫管理システムという領域に強い関心を抱く契機となった。

——ダイアログを設立した翌年に最初のWMSが完成した。

方志 5社しか買ってくれず、失敗に終わった。敗因ははっきりしていた。最初に注文を受けた食品企業の3温度帯管理のシステムを開発する過程で、その企業のニーズにかなり偏った仕様としてしまい、結果として他社には使いにくいものになってしまった。赤字を垂れ流すわけにはいかないため、発想を転換してWMSの基本概念の再検討を決断した。

——この失敗で得た教訓は。

方志 ストックポイントを汎用化できる仕組みをしっかり構築する大切さを痛感した。モノの出入りをまとめて管理できるWMSにするとの方針を固めて、汎用性だけでなくカスタマイズのできるシステムとして提供することで、はじめて現場の実効的な課題解決を支援するシステムとして仕上げられると考えた。その後は、大手企業から受注したの案件のカスタマイズを繰り返して標準機能を構築することで、さまざまなニーズに対応できる柔軟性を磨いていった。

WMSの役割は倉庫という「概念」の変化とともに変革し続ける

WMSにビジネス機会を見出し、失敗を経て「汎用性」という強みを獲得したダイアログのWMS。今後、大きな変革の波が押し寄せるであろう物流業界で、WMSの提供を通してどんな未来を描くのか。

——物流の変革は、倉庫の概念をどう変えると考えているか。

方志 倉庫が変わると言うよりも、店舗が「倉庫化」していくと考えている。コロナ禍が消費スタイルを最も大きく変えたのは店舗だ。EC(電子商取引)をはじめとする宅配サービスでモノを購入するようになると、実店舗はそのためのストックヤードになる。つまり店舗が倉庫になるわけだ。その流れは、コロナ禍が収束していわゆる「新しい生活様式」の時代になっても変わらないと考えている。

——「倉庫化」でWMSに求められる機能はどう変わるのか。

方志 倉庫は棚割りがバーチャル化して物理的な制限がなくなるのだろう。フィジカルな棚構成となり、対面よりもピッキングやソーターなどのロボットが活躍することで、WMSはこうした機器やシステムの協調性や連動性をオペレーションする必要が出てくるのではないか。さらに言えば、複数の店舗の一元管理や、店舗間移動を踏まえた対応も求められてくるだろう。

——ロボットや自動化が進むとなれば、より高い汎用性が求められるのではないか。

方志 WMSの方向性は、間違いなく汎用性を極限まで高めていくことになるだろう。突飛な構想と思われるかもしれないが、自動化運転が実現すれば、24時間トラックが荷物を運ぶことも不可能ではなくなる。そうすれば、次に起きることはトラックの荷台の「倉庫化」だ。ストックポイントの流動的な進化が起きることで、拠点の概念が決定的に変わる。WMSは業務と在庫の管理を担うシステムとして、繁閑に応じてロボット機器をマッチングさせたり、空き倉庫を探している企業に提供したりする動きに対応していくことになるだろう。

——WMSは、現在の業務効率化とは違った役割を果たす機能として進化しそうだ。

方志 システムのあり方は、その対象の変革に応じて柔軟に対応していくべきだ。その意味では、WMSが管理する倉庫の概念が変われば、当然システムも連動して役割を変えていく必要が生まれるのは当然だ。物流は途絶が許されない社会インフラであるため、どうしても機能がボラティリティ(変動の度合い)の最も高いラインで設定されている。いわば、最も繁忙な日でもパンクしないように設備が配置されているわけだ。それでは閑散期でなくても余裕が生じることになり、そこでリソースの配分つまりマッチングという仕事が生まれる。これはあくまで一例だが、WMSはこうした機能を担うシステムとして変化を遂げていく存在であることを、認識しておく必要がある。

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