
▲激しい勢いで黒煙が上がる
事件・事故大阪市此花区の人工島・舞洲で11月29日に発生し、鎮火までに丸5日間かかった日立物流西日本舞洲営業所の倉庫火災。出火原因の特定に向けた動きが本格化してきた。出火原因の解明が進むにつれて、今後は関係者や荷主企業への対応が焦点になっていく模様だ。
市消防局などによると、実況見分を8日に始める。警察や倉庫関係者も立ち会い、出火元の特定や原因究明を進める方針だ。
市消防局は2020年5月、この規模の倉庫に義務付けられている立入検査を行っており、火災の発生した倉庫についても問題がないことを確認している。消防法施行令で設置が義務付けられている消火器や消火栓といった消防設備が整備されていたほか、7階にはスプリンクラーも設置されていた。市消防局は、そのうえで、なぜ燃え広がったかについて、倉庫関係者とともに検証を進めていく。
日立物流も、8日以降、実況見分に協力するとともに、今回の火災で支障が出ている荷主企業への対応を急ぐ。火災の影響で出荷できなくなった荷主企業に対して、入出荷の拠点を全国各地に移して商品などの供給ができるよう、調整を進めている。火災による煙が周辺企業や地域住民にも広がったことから、周辺企業などを回って謝罪や状況説明を続ける。
また、日立物流は7日現在で、健康被害が5件以上、電話などで寄せられている。煙で喉が痛い、煙で目に違和感があるなどの症状を訴えているという。日立物流は専用ダイヤルを設置して、個別に対応にあたっている。
荷主の製薬企業では、すでに具体的な影響が出ている。大原薬品工業(滋賀県甲賀市)は3日から配送できない状態になっており、現時点で67品目が欠品となる事態となっている。
同社によると発生直後は、東日本の物流センター(埼玉県久喜市)のみの拠点に切り替えて対応していたが、出荷が増える月初と重なったことから、全国への配送がまかないきれなくなった。
同社は6日、取引先の医療機関にたいして「出荷調整をさせていただきながら、欠品品目の供給再開に向けて最大限の生産に努めております」と理解と協力を求めた。
物流関係者の「スタンダード」変革を促す結果になる可能性も
物流業界を騒然とさせた日立物流西日本舞洲営業所の火災は、8日からいよいよ実況見分が始まることで、大きな節目を迎えた。今後は出火原因の究明が進むとともに、それを踏まえた荷主企業をはじめとする関係者への対応が具体化していくことになる。

▲煙が充満し、トラックが立ち入れなくなったバース
出火原因の解明に至る過程で焦点となるのが、物流施設の構造上の課題が浮き彫りになることだ。今回の火災では、窓の小ささが消火作業を長期化させたとの指摘も出ている。もちろん、当局の実況見分などの過程で明らかになるだろうが、これを契機に倉庫の設計におけるスタンダードが変わる可能性もある。
いずれにせよ、物流施設開発における「教訓」となるような事実が明らかになったならば、それを真摯に受け止めて、新設物件への対応はもちろん、既存施設についても見直しを進める必要がある。当局の判断を踏まえながら、有識者も交えた物流関係者間の検証も必要ではないか。社会に不可欠なインフラである物流を途絶させないためにも、こうした事態を可能な限り未然に防ぐ必要があるからだ。(編集部・清水直樹)