ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

日本郵政、総合物流化へ3年で4900億円投資

2026年5月15日 (金)

ロジスティクス日本郵政は15日、2026年度から28年度までを対象とする新中期経営計画「JPプラン2028」を発表した。郵政ネットワークの持続性確保と成長領域の拡大を同時に進める方針で、物流分野では郵便・物流事業の構造改革と、国際物流・国内物流・ラストワンマイルを一体運営する「総合物流企業」への転換を重点戦略に掲げた。金融2社を除く投資計画では、郵便・物流事業に3年間で3900億円、国際物流事業に1000億円を投じる。

同社は、長期的に目指す姿として、郵便局ネットワークを活用した生活サポート、金融、物流の3つのプラットフォーム化を示した。このうち物流では、従来の郵便・宅配中心のネットワークを、企業間物流や国際物流まで含む総合物流プラットフォームへ広げる。国内外のコントラクトロジスティクス、フォワーディング、中大口配送、宅配を組み合わせ、海外から国内エンドユーザーまでを一体で提供する体制を目指す。

25年度の郵便物数は118億通となり、ピークだった2001年度の半数以下に落ち込んだ。近年はデジタル化の影響で年5%台の減少が続いており、現行の週5日配達や4日以内送達などのサービス水準を前提にしたままでは、収支均衡が難しくなっている。新計画では、デジタル技術を使った生産性向上や要員管理、商品・サービスの見直しを進めたうえで、郵便料金の見直しやサービス水準の見直しも要望するとした。

郵便・物流事業では、集配拠点の再編を柱に据える。現在3200ある集配拠点を、28年度までに2700拠点へ集約し、500拠点を削減する。地方部では集配機能を集約し、地域区分局で郵便・荷物の集中処理を進める。集約後の拠点では、四輪車などで郵便と荷物を併せて配達する柔軟なオペレーションを取り入れる。拠点集約による効率化効果は50億円を見込む。都市部の一部郵便局では、集配機能を移転した跡地を不動産開発に転用し、収益拡大にもつなげる。

▲集配拠点を集約し、拠点配置を最適化(クリックで拡大、出所:日本郵政)

要員面でも、郵便物数の減少に合わせた人員縮小と配置転換を進める。郵便・物流セグメントでは、郵便物数の減少に合わせた体制見直しで1万人の削減を見込む一方、配達委託の内製化で3000人の増加も織り込み、28年度の社員数を19.4万人とする計画だ。AI(人工知能)による運送便設定、共同運行、積載率向上、テレマティクスやルーティングシステムの活用、省スペース型パケット区分機、ロボットアームなどの導入により、輸送、局内作業、集配の各工程で省力化を進める。

総合物流企業への転換では、M&Aや資本業務提携を活用する。前中期計画では、日本郵便がJPトナミグループを通じてトナミホールディングスを完全子会社化し、特積み事業とロジスティクス事業を取り込んだ。ロジスティードホールディングス、ロジスティードとの資本業務提携契約も締結している。新計画では、こうした外部企業との連携を通じ、車両・拠点の相互利活用や経営資源の集約を進める。国内ではトラック輸送、3PL、宅配、海外ではトール・ホールディングスを中心とする国際物流やフォワーディングを組み合わせる構想だ。

荷物分野では、ゆうパック、ゆうパケットの収益拡大を掲げる。国内宅配市場全体の大幅な伸びが見込みにくいなか、差出・受取利便性の向上、柔軟な運賃体系、顧客ニーズに応じた物数戦略を進める。ゆうメールを含む荷物収益は、25年度の6400億円から28年度に7400億円へ伸ばす計画だ。個数では、ゆうパックを5.7億個から6.3億個へ、ゆうパケットを5.6億個から6.7億個へ増やす。日本向け越境EC(電子商取引)に対応した商品の開発、通知機能の到達率向上、郵便局アプリやデジタルアドレスの利用拡大も盛り込んだ。

同日発表した26年3月期決算では、郵便・物流事業の営業損失は118億6200万円となり、前期の383億7700万円の赤字から改善した。ただし、料金改定やJPトナミグループの連結効果が増収に寄与した一方、人件費、集配運送委託費、燃料費、施設使用料などの費用も増えた。27年3月期は郵便収入の減少と人件費・集配運送費の増加により、同事業の営業損失を1040億円と見込む。新計画は、この再悪化を前提に、料金、拠点、要員、外部連携を同時に見直す内容となる。

国際物流事業は、28年度に営業利益160億円、ROA(総資産利益率)3.5%を目標とする。26年3月期は、フォワーディング事業で海上運賃の下落や取扱量減少が響いた一方、ロジスティクス事業の伸長と費用削減でEBIT(利払い前・税引き前利益)は138億5000万円と小幅に改善した。新計画では、施設・設備投資900億円、システム投資100億円の計1000億円を投じ、海外拠点、フォワーディング、国内配送との接続を強化する。

日本郵政は、28年度の全社目標として、郵便料金改定が実施された場合に株主資本ベースのROE(自己資本利益率)7%超、親会社株主に帰属する当期純利益7000億円超を目指す。料金改定がない場合も、ROE5%、同利益5000億円を下限とする幅を示した。一方、料金改定がない場合はROE5%、最終利益5000億円を下限とする幅を示した。郵便・物流事業の営業利益目標も、料金改定の有無により230億円から1730億円の赤字まで幅を持たせている。

物流事業の構造改革は、成長戦略であると同時に、郵便ユニバーサルサービスを維持するためのコスト構造改革でもある。郵便物減少、行政処分後の運行体制見直し、人手不足、外部委託費上昇が重なるなか、トナミやロジスティードなどとの連携を収益改善に結び付けられるかが、計画の実効性を左右する。

日本郵政、郵便・物流赤字縮小も再悪化見込み

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com

LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。

ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。