話題「美しかった」──。中古本ECのバリューブックス(長野県上田市)の製品選定を担う担当者は、自動化パートナーにフランスのエグゾテック(EXOTEC)を選んだ決め手をそう表現した。
鳥居希社長は、この現場スタッフの直感こそが、古本特有の複雑なオペレーションと一点の無駄もなく合致する「機能美」の証明であると確信した。同社は埼玉県吉見町の新拠点「埼玉吉見倉庫」にエグゾテックの棚搬送型ロボット「スカイポッド」80台を導入する。

▲鳥居希社長とEXOTEC幹部(出所:EXOTEC)
投資総額は10億円規模、本年12月に本格稼働の予定である。2025年6月期に39億1700万円だった売上高を、稼働から6年で100億円規模へ引き上げる計画の要となる。複数ベンダーから相見積もりを取ったうえでの選定だ。何が美しかったのか。
同社の物流は「単品管理」を前提に組み立てられてきた。在庫187万点のうち圧倒的多数を古本が占める。同じタイトルの本であっても、状態や市場の需給のバランスなどにより仕入れ値も販売価格も個別に設定される。入庫から発送までの全工程が「この棚のこの位置にあるこの一冊」というピンポイント管理で動く。
1日3万冊が買い取り依頼として届き、査定を経て買い取れるのは半分ほど。残りはブックギフトや捨てたくない本プロジェクト、古紙回収へと仕分けられる。この単品管理そのものは、上田の既存5拠点で、人手と付箋、棚番号の組み合わせですでに日々機能してきた。

▲作業風景(出所:バリューブックス)
課題は単品管理そのものではない。それを支えてきた体制にあった。上田市内に分散した5拠点、物量の増加がそのまま人員の増加に直結する実態、そしてスケールに応えられる大型マルチテナント倉庫が上田市内には存在しないという物理的制約——この3つが重なり、これ以上の成長には物流基盤を引き直すしかない局面に差しかかっていた。上田で借りている4拠点のうち1カ所が契約更新期を迎えたこと、経済産業省・中小企業庁の中小企業成長加速化補助金が公募されたタイミングも、決断を後押しした。
同社は新旧拠点で役割を分けた。ISBN付きなど規格化できる流通本の査定から発送までは、埼玉に集約して効率を追求する。ISBNのない希少古書の発掘、買い取り時に値段がつかなかった本を生かす捨てたくない本プロジェクト、自社メディアでのコンテンツ制作など、人の価値を最大限活かせる仕事は上田に残し、埼玉で生まれたキャパシティを人員の再配置で充てる。

▲倉庫の様子(出所:バリューブックス)
上田拠点で働く現行の人員体制は維持する方針で、25年6月末時点の従業員数は298人。鳥居氏はこれを「埼玉の効率化と上田の価値創造のトータル」「ジャストトランジション」(公正な移行)と呼ぶ。24年10月に取得した国際認証「B Corp」の考え方とも重なる。
分けられた二つのうち、埼玉で扱うのはルーティン化可能な単品管理業務だ。既存の住所管理モデルをそのまま大規模にスケールさせるには、自動倉庫ロボの搬送の動きかたが、バリューブックスの業務の動きとずれていないことが前提になる。ずれたまま台数だけを増やしても、現場には無駄が積み上がる。どのロボットを入れても同じ、という話ではなかった。
各社のシステム設計の中身を比較したうえで、鳥居氏は他社との違いをこう語った。「仕組みがやっぱり違う。他社さんのシステムのほうが合う会社もたくさんあると思う。ただ、私たちにはスカイポッドが一番フィットする」

▲EXOTECのスカイポッド(出所:EXOTEC)
鳥居氏の説明は具体的だ。「一番効率が良いのは、目当ての一冊をピンポイントで取れること。その次に良いのは、できるだけ小さい塊になっていて、その塊だけを運んできてくれるロボット。特定の本が入っている塊が大きければ大きいほど、無駄が発生する」。一点ずつ住所管理された本を、できるだけ小さな単位で、必要な一冊だけに近い塊で運んでくること。スカイポッドはビン(ケース)単位の搬送を基本設計としており、この「運ぶ塊の最小化」という要件に合致していた。
決め手は運ぶ塊をどこまで小さくできるか
バリューブックスが「美しい」と評した中身は、ロボット単体のスペックではなく、業務の動きと搬送の動きがずれないこと、その一点にある。自らの言葉で鳥居氏はこれを「自分たちのプロセスに一番無駄なくフィットする」と定義する。埼玉新拠点の要件と、スカイポッドの評価点を並べると次のようになる。いずれも、単品管理の動きとロボット搬送の動きをずらさないための条件である。

▲バリューブックスが重視した新拠点の要件
要件と設計の一致は、ハードの選定にとどまらず、入荷から梱包までの複数の工程に及んだ。「システムの論理と、古本特有のオペレーションが、一点の無駄もなく合致している状態」と鳥居氏は表現する。
もう一つ、契約後に改めて評価を高めた要素があると鳥居氏は付け加える。エグゾテックの姿勢だ。「この規格でしか提供できません、という形ではなく、自分たちがこうしたいというところに、できるだけ近いソリューションを一緒に考えてくれる」。既存のパッケージに業務を当てはめるのではなく、業務の動きに合わせて設計を詰めていく関わり方だ。入庫時の画像取得と査定データの連携を含む査定自動化の領域は、契約後も開発設計が続く部分で、同社が保有する査定データとエグゾテックのハードウェアを組み合わせて作り込んでいく。
10億円の投資の原資には、中小企業成長加速化補助金を充てる。補助額の上限は5億円で、前提条件は賃上げだ。稼働後3年で年率23%成長・6年で売上高100億円というマイルストーンも、従業員の賃金を一定水準に引き上げるための通過点として設定された。年率23%は、同社の過去の実績から逆算した「無理なく組織を拡張できる水準」だという。吉見町のマルチテナント倉庫は同一建物内や近隣で床面積を追加しやすく、物量が想定を上回った場合の拡張余地も織り込まれている。
中古品流通におけるスカイポッドの導入は、エグゾテックにとってリユース業界で国内初の案件となる。本格稼働は26年10-12月。埼玉はルーティン領域の効率化を、上田は希少古書の発掘やコンテンツ制作など非定型領域の価値創造を担う。単品管理という同社の前提を変えずにスケールさせる──その業務分解と設計に寄り添ったのがエグゾテックだったと鳥居氏は振り返る。同社の物流拠点は長野・埼玉の計6か所となる。
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