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日本郵船、気候変動対応で最高評価を2年連続選定

2021年12月8日 (水)

認証・表彰日本郵船は8日、気候変動対応における世界の先進企業として、英国の国際環境非営利団体CDPより最高評価「気候変動Aリスト」に2年連続で選ばれたと発表した。

CDPの環境情報開示とその評価プロセスは、企業の環境情報開示におけるグローバルスタンダードとして全世界で広く認知されている。2021年度は運用資産規模が総計110兆ドル(1京2485兆円)に達する590の機関投資家と、購買力規模が総計5.5兆ドル(625億円)に上る200社の企業・団体を代表して、CDPから全世界の企業へ質問状が送付され、歴代最高となる1万3000社が回答した。

このたび気候変動Aリストに選定された企業は、評価対象となった全世界の1万2000社のうち221社であり、うち国内企業は60社。海運会社は日本郵船を含めて2社だった。

日本郵船は、温室効果ガス排出削減の実績や気候変動リスクの緩和に向けた一連の取り組みについて、世界の先進企業の取り組みとして総合的に評価され、20年度に続きAリストに選定された。

(イメージ)

気候変動リスクの緩和に向けて、環境問題に対する「リスクと機会」の適切な認識・評価▽温室効果ガスの排出量や削減量を含めた透明性の高い環境関連情報の開示▽グリーンボンド、グリーンローン、サステナビリティ・リンク・ローンなど各種のグリーンファイナンスへの積極的な取り組み▽LNG(液化天然ガス)燃料の導入や普及、各種燃節活動を通じた温室効果ガス排出量低減への積極的な取り組み▽水素やアンモニアをはじめとするゼロエミッション燃料の実用化に向けた研究や実証事業への積極的な取り組み――などに注力している。

日本郵船グループは、ESG経営戦略への統合をさらに加速させることを掲げた「NYKグループ ESGストーリー」をことし2月3日に発表。SDGsの達成に貢献する活動を進めている。ことし9月には外航海運事業における温室効果ガス排出量削減の長期目標を「2050年までのネット・ゼロエミッション達成」と決定している。

今回のCDP最高評価選定を契機として、今後も気候変動対応における世界の先進企業として関連情報開示に努めるとともに、社会や産業から必要とされる企業として新たな価値を創造していく。

環境施策はその取り組みを「公表」することで初めて社会を動かす施策となる

日本郵船が、気候変動対応に先進的に取り組む企業としての「お墨付き」を、2年連続で獲得した。環境対応を企業活動の基本とする現代の経営において、海運事業で市場をリードするだけではなく、脱炭素をはじめとする環境負荷低減活動で世界の範となることが、グローバル企業グループとしての地位をつかむ条件になっている。日本郵船グループは、率先して環境経営を推進することで、持続的な成長を遂げる意思を強く示した格好だ。

日本郵船グループの気候変動リスク緩和に向けた取り組みで特筆すべきなのは、環境関連情報の開示ではないだろうか。グループ内での取り組みを推進していても、それを社会が認知しない限り、企業の成長にはつながっていかないだろう。いかに適切にアピールするか、つまり訴求力が評価されるのだ。

(出所:日本郵船)

その点で、日本郵船は、グループのESGストーリーを発表したり、温室効果ガス排出量削減の長期目標を明確化したりと、キーワード化したインパクトのある環境施策を前面に打ち出す動きが目立った。環境に関わる活動そのものを実施するだけでなく社会にアピールする大切さを強く意識した経営姿勢が際立ち、今回の評価となったようだ。

環境施策は、これまで企業価値向上につなげる「手段」として解釈される傾向が強かった。環境負荷低減への取り組みのステータスを経営指標にまで高め、それを広くステークホルダーに示すことで初めて、社会を動かす具体的な施策となる。日本郵船の今回の最高評価選定は、それを如実に物語っている。(編集部・清水直樹)