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日立物流倉庫火災、段ボール製パレット燃え広がる

2021年12月13日 (月)

▲舞洲で起きた倉庫火災の様子

事件・事故大阪市此花区の人工島・舞洲で11月29日に発生した日立物流西日本の倉庫火災で、炎が燃え広がった場所は、1階中央付近の段ボール製のパレットからだったことがわかった。13日現在も、府警による現場検証が行われており、出火原因の特定を急いでいる。

親会社の日立物流によると、段ボールパレットは、複数枚が積み重ねて保管されていたという。同社は現場検証に立ち合い、協力するとしている。

コストカット・効率化への追求と防災意識との両立はかれるか

今回、炎が燃え広がったとされる場所としてあげられたのは、段ボールパレットだった。

パレットとは、倉庫をはじめ工場、コンテナ、トラックなどに荷物を載せる荷役台のことをいい、人手不足に悩む物流業界にはなくてはならない存在だ。

パレットの差し込み口にフォークリフトのフォークを差し込むと、数ある荷物を一度に移動や上げ下げすることができ、作業効率が格段にアップする。

素材はもっとも主流な木製やプラスチック製、スチール製、アルミ製などさまざまななか、最近はコストやエコの観点から、段ボール製パレットの需要が増えている。

(イメージ)

木製パレットだと、たとえば輸出の際に虫がつくなどしてくん蒸処理の費用がかかったり、輸出先での廃棄費用がかかったりといったコスト面での負担が大きい。これに対して、段ボールパレットは軽量のためトラックなどへの積載量が抑えられるほか、輸送エネルギーも抑えることができることから、二酸化炭素の排出削減のためにもパレットを段ボールに見直す物流企業は増えている。

重さも木製やプラスチックパレットの数分の1程度のため、作業効率や輸送効率も格段にアップさせることができる。

このような利点が数多くある段ボールパレットの普及と今回の火災とで、関連性があるのかは分からない。

都内で段ボールパレットの製造を手がけるある会社には、ここ最近、段ボールへの変更を検討する物流業社からの問い合わせ件数が増えているという。

問い合わせの内容は、どれだけのコストカットが見込めるかや、耐久性への懸念についての相談がほとんどで、防災の観点からの相談はまったくないという。担当者も、段ボールパレットの弱点として、唯一、水気への多さをあげ、ほかの素材のパレットと比べての引火のしやすさや安全性の観点についての記者の質問には分からないと話した。

だが、今回の倉庫火災を受け、効率性やコスト重視、持続可能な開発目標の実現に向けた物流業界の取り組みと、火災のみならず、物流にたずさわるもの一人ひとりが安全に働けるための防災・減災との両立といった観点にも、もっと目を向けていく必要が、少なくともあるのではないかという気がした。(編集部・今川友美)