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大日本印刷、飲酒検知のスマホアプリを開発

2021年12月13日 (月)

(出所:大日本印刷)

荷主大日本印刷(DNP、東京都新宿区)は、アルコール検知器をスマートフォンに接続して、アルコール検査をリモートで行えるアプリ「安全運転アプリケーションmamoru(マモル)」を開発した。

道路交通法の改正で来年10月、白ナンバーの車を一定台数以上使う事業者に対し、アルコール検知器による酒気帯びの確認が義務付けられるのを受けて、その需要を見込み開発された。来年春に販売予定で、80事業所での導入を目指す。

アルコール検知器は、タバコや歯磨き粉といったアルコール以外のガスに反応しにくい高精度の「電気化学式センサー」を採用。検知器をブルートゥースに接続して測定することができる。

測定にあたって運転手はまず、アプリを開いて運転免許証をかざし、不携帯や有効期限切れを確認する。このほか、事業者が独自に設定した睡眠状態や健康状況についての質問を「○×」で回答。その後、検知器での体温測定を経て、息を吹きかけてアルコールをチェック。社員すべての結果はもちろん、アルコールが検知された際にはただちに管理者へ通知がいく仕組みだ。

アルコール測定中は、顔写真を撮影することで本人確認されるため、なりすましも防止することができる。

▲測定のフロー(出所:大日本印刷)

同社によるとアプリの導入で、アルコールの検知結果や社員の健康状況などを確認する点呼を、30~60秒ほどの短時間で、いつでもどこでもおこなえるため、管理者の手間や負担を軽減できる。また、社員の無免許運転や飲酒運転を未然に防止することで、企業の社会的信用を守るほか、運転する社員の安全も守れるとしている。

それでも個人のモラルを信じるしかないというジレンマに、どう立ち向かうのか

今年6月、千葉県八千代市で飲酒運転のトラックが小学生の列につっこみ、児童5人を死傷させた。

同じトラックでも有償で荷物を運ぶ「緑ナンバー」の事業者にはすでに飲酒検査が義務付けられていたが、事故を起こしたトラックが「白ナンバー」だったことから注目が集まり、道交法改正へとつながった。

ただ、これまでのトラックの飲酒事故のなかにも、点呼が実施されていなかったケースや、点呼をすり抜けた運転手がそのまま出発してしまったケースが報告されている。

今回のアプリも、運転手のチェック結果は、運転手本人へはもちろん、管理者にも通知されるしくみだ。だが、仮に管理者に通知され、本人に絶対に運転しないよう連絡したとしても、事業所から離れた出先などのリモート先で、アルコールが残ったままの運転手がそのまま走ってしまうことを、誰も止めることはできない。

さらに、緑ナンバーとちがって、白ナンバーはトラックや自家用車といった種類も幅広く、事業所などでリアルに点呼することがそもそも難しい環境にあるため、アルコールを検知した際の通知機能が、どれだけ有効性を発揮するのか、こればかりはどうしようもないといったところか。

(イメージ)

同社も「アルコールが検知されたら、自動車のエンジンがかからないようにするしか、いまのところ手立てはない」という。通知がきちんと有効性を発揮することと、運転者のモラルに委ねるしか、いまのところは手立てはない。

ただ、同社のデジタル技術を自動車に連携せることは「技術的には不可能ではないこと」とし、今後はいかなるケースでも、飲酒運転の車を走らせないしくみ作りに向けて、検討を始めている。

同社のみならず、来年10月の改正のタイミングを前に、運転手のアルコール検知を管理するシステム作りや技術に、企業がしのぎを削っている。

後をたたない悲惨な飲酒事故を二度と起こさないためにも、また、ドライバーの安全を事業者が第一に守っていくという当たり前が当たり前の社会になっていくためにも、業界を超えて、関係者が一体となって連携し、知恵を出し合っていくことが求められる。(編集部・今川友美)