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CBクラウド、60億円の資金調達完了

2021年12月17日 (金)

ロジスティクスドライバーと荷主をつなぐプラットフォームを手がける「CBcloud」(CBクラウド、東京都千代田区)は17日、物流スタートアップとしては異例で巨額の60億円の資金調達を完了したと発表した。これにともない、即時・即日配送サービスを法人だけでなく消費者向けサービスとして広げることなどを盛り込んだ3つの強化策を示した。

CBクラウドはこれまで、買い物代行サービス「PickGo」(ピックゴー)で荷主と約3万人の配送パートナー(ドライバー)をマッチングさせ、24時365日の即時・即日配送のプラットフォームを展開してきた。

▲PickGo(出所:CBcloud)

資金調達にともない、これまで法人向けサービスとして展開してきたPickGoを個人にも拡大することで、多様化する配送ニーズの取り込みを図ることにした。

17日、「PickGoエクスプレス」(アプリ版)をリリースし、アプリから依頼するだけで、法人向け配送の経験が豊かなドライバーが、即時・即日を含めた指定する時間や場所に届けることができ、利便性がアップする。

近年、EC需要やフリマアプリなどを利用者が増え、個人から荷物を届けるケースが増えた。一方、宅配便を利用するほどではないが、プライベートや仕事で急いで荷物を届けたいシーンは増えている。レンタカーで運びたいが運転が不安、タクシーに載せたいが大きすぎるといった困りごとをかかえている人も増えていることに着目。

これにより、たとえば、イベントで使用する資材を会場に▽お店で購入した家具を自宅に▽バンドの機材をライブハウスに▽使わなくなったソファを友人宅に――届ける、といったことをかなえることができる。

また、サービスの利用形態に合わせる形で事業メニューを再編成し、従来のエクスプレスだけでなく、「PickGoエンタープライズ」を新たに定義。ネットコンビニやネットスーパーなどと連携することで、法人向けを強化し、これまで難しかった短いリードタイムでの配車や、予測しにくい需要変動への対応力を高める。

PickGo事業の強化に伴い、人材採用にも力を入れる。

(出所:CBcloud)

資金調達により、経営陣が一堂に集まりオンラインイベントを開き、今後の戦略方向性や求める人物像について、リアルに発信する機会を設ける。これまで100人いた社員を2倍に増やす計画だ。

また、これまでも同社の趣旨に賛同する企業と軽貨物マッチング領域での事業拡大に取り組んできたが、他社とのアライアンスも加速させ、業種の先入観にとらわれないさらに多様な企業との連携で、プラットフォームインフラとしての価値を高めていきたい方針だ。

60億円の資金調達は、血の通ったDXを待ち望む声だ

「エンパワーメント」という言葉がある。

もともとは、社会的に抑圧されたり、不利な状況に置かれている人や集団にたいして、その固有の能力や長所に着目して、本来の強みを引き出し、生活や環境を自らコントロールできるように支援するという考え方だ。

20世紀のアメリカの公民権運動で提唱され、世界的に広まった概念だが、たちまち福祉分野などでのソーシャルワークの考え方に浸透されるようになり、最近ではビジネスをはじめ幅広い分野でも、この概念がもちいられるようになっている。

CBクラウドもこうしたエンパワーメントの理念が根底にあるといえる。労働力人口の減少もあり、担い手不足は全産業に共通する課題だが、ドライバーの急速な高齢化や若年層の参入へのハードルが高い物流現場では、コロナ禍を背景とした輸配送ニーズの急激な高まりも重なり、さらに厳しい状況に立たされている。

そんななか、業務効率をシステムやロボット開発によってアップさせたり、管理者の負担軽減のための技術の開発にむけて、各社がしのぎを削っている。

(イメージ)

そんななか、同社は、企業目線もさることながら、ドライバーや個人事業主であるパートナーに寄り添う「ドライバー・パートナーファースト」の視点を掲げる。まずは物流を支えるワーカーの目線で、社会問題の課題解決に努めていく。それが同社の原点だ。

山積する物流の課題を、もっともしわ寄せがいっている現場、語弊を恐れずにいえば、抑圧された立場の視点に立って考える。誰もが自分の仕事に誇りを持って、胸を張って、目の前のことに懸命に生きていけるように――。エンパワーメントは、企業目線だけでは成り立たず、特定の立場だけの繁栄だけでも成り立たず、そこにたずさわるものすべてにおける立場の人たちが、かかわり合い、尊重し合うことで、実現することができる。

同社はそんな、血の通ったDXを、物流で成し遂げようとしている存在だ。異例ともいえる60億円の資金調達は、その期待のあらわれともいえる。(編集部・今川友美)