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コロナによる先行き不透明感、高騰に拍車【連載・中編】

2022年2月22日 (火)

話題

【前編】商用車オークションに潜入、緊迫感にのみ込まれ…

【後編】必要とする人が、この世界のどこかにいる限り

昼食を終えると男性は自販機の前に立ち止まり、小銭を入れた。「何飲む?」と尋ねられた記者は、甘めの温かい缶コーヒーをどれにしようかと迷う。そうこうしている間に、もう一台の隣の自販機から、男性の選んだブラックコーヒーが取り出される。

慌ててボタンを押して、男性の背中を追う。途中、「調整室」という部屋があり、偶数と奇数レーン別に分かれていた。出品者はそれぞれのレーンの窓口の前に並び、自分の順番が来ると売り切りのタイミングなどを、ダイレクトに伝えていく。

▲調整コーナーで順番待ちをする人たち

会場外のロビーでも、競りの様子をモニターで見守る関係者たち。再び会場に戻ると、あちこちから大音量の電話の着信音が飛び交ったり、人の出入りも増えてきたりして、慌ただしさは極まりない。

それもそのはず、男性のところにも、新型コロナウイルスの感染拡大以降、半導体不足の影響で新車が手に入らなかったり、納期が長期化したりすることで、新車を待っていられない顧客からの中古購入の依頼が急増している。

男性のもとには、すでに新規ドライバーの採用が決まっていたり、荷主からすでに仕事を引き受けてしまったからには断れなかったりと、「新車がないのならば、すぐにでも中古車を買いたい」といった運送会社からの危機迫った相談が相次いでいる。

また、車検時期に合わせて納入される予定だった新車がコロナ禍で入らなくなり、車検時期に間に合わせられるような中古車の購入を、割高とはいえ背に腹は替えられないと決断するケースも多いという。

「中古車相場が高騰し続けることによる、先行きの不透明感がピークになっている」と男性は話す。

オークションは、こうした社会情勢を如実に映し出す鏡ともいえる。

▲三菱スーパーグレードダンプが落札されたときの画像

「すげーすげーすげー」「これはもう、おいしいですよ」

そう男性が凝視する画面を見ると、2016年式の走行距離24万キロと、まだまだこれからの三菱のダンプが、強気の660万円でスタートし始めていた。

780万円まで数秒間で一気に高騰したところで、「ピンポンピンポン」のベル音と落札決定の表示。

すると間髪入れずに次の落札がスタートし、また次へ……といった実に目まぐるしくおびただしい流れだ。それが偶数レーンと奇数レーンとの両画面で同時進行されているので、男性の眼球も右へと左へと忙しく行き交う。

中古車価格の高騰は、男性の予想よりも深刻だった。

続いて出品されたのは、汎用性のあるゲートもついた人気の冷蔵冷凍車だった。こちらも2017年製で走行距離36万キロと浅く、360万円からのスタートだった。

「相場が高騰しているにしても、これはいくらなんでも流れるでしょ」などと男性がつぶやいている間にも、価格は436万円まで急騰していった。

442万円をカウントした時点で「売り切り」を知らせる合図が鳴ると、男性は「いやっ、流れないわ。それでも高っ」と驚きを隠せない様子。

最後まで激しい競り合いが繰り返され、471万円で落札された。

▶【後編】必要とする人が、この世界のどこかにいる限り