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日本郵船、南アジア地域・中東地域代表新設

2022年2月24日 (木)

国際日本郵船は24日、ことし4月1日付で「南アジア地域代表」(シンガポール)と「中東地域代表」(アラブ首長国連邦・ドバイ)を新設すると発表した。南アジアと中東の関係各国に「国代表」も設置する。

日本郵船はこれまで、米州・欧州・南アジア・東アジアの4極に、地域内のガバナンス管理と強化に特化したRegional Governance Officer(リージョナル・ガバナンス・オフィサー、RGO)を設置していた。刻々と変化するグローバル事業環境に対応したグループの地域戦略の深度化と機動力の強化を図るため、RGOを維持したうえで新たに地域代表と国代表を設置することとした。

南アジアおよび中東の地域代表は、南アジア地域統轄会社の代表者とドバイ在勤が、国代表は原則としてグループの各国現地法人の代表者や駐在者がそれぞれ指名する。

地域代表と国代表はグループの代表として、連携して情報を収集するとともに、地域代表を通して本社トップマネジメントに地域戦略を提言する。地域内におけるグループの事業や社会貢献分野の情報発信・広報活動を強化していく。さらに、地域内における自社グループ人材の育成も推進。幹部層人材については、将来の経営幹部候補として本社と連携しながら育成を進める。南アジアと中東以外の地域代表・国代表については、今後順次設置していくことを検討する。

日本郵船グループは、ESGの経営戦略への統合をさらに加速させることを掲げた「NYKグループESGストーリー」を21年2月3日に発表。地域代表と国代表の新設により、ますます多様化する各地域の動向やニーズをとらえるとともに、顧客や社会の問題解決に資するサービスを提供することで、新たな価値を創造する。

日本郵船、南アジア・中東における事業基盤をグローバルの物流「新市場」獲得の橋頭堡(きょうとうほ)にしてほしい

日本郵船が南アジアと中東に地域代表を新設するのは、グループのグローバル戦略の策定・実行における重点エリアとして、焦点を定める意思表示であると言える。南アジアと中東は、将来の世界経済の成長エンジンとして、世界各国が積極的に投資している地域だ。物流事業の進展が期待されるのも当然であり、日本郵船は今の段階で事業基盤の構築を進めておくことで、成長市場における顧客ニーズ獲得を一気に進めたい思惑がある。

(イメージ)

経済成長をけん引するのは、アジア太平洋諸国から南アジア、中東、アフリカへと広がっていくの見方が支配的だ。世界の物流企業もこうした地域における投資を積極的に進める動きを尻目に、日本郵船など国内勢も乗り遅れまいと対応を急いでいる。国内を含めた世界の既存市場ではサービスの付加価値で差別化を図りながら、こうした成長市場でも着々と本格的な事業展開の準備を進める。グローバルでの経済シフトが進む将来にわたって、企業が成長を続けるための必須条件だ。

日本郵船グループには、南アジアと中東を足掛かりに、国内勢にとっては未知の市場とも言えるアフリカへの進出の足場も構築してほしいところだ。中東と経済的な結びつきの強いアフリカ諸国における物流ニーズは今後、グローバルで無視できない勢力にまでのし上がってくるポテンシャルが十分にあるからだ。むしろ、ここで「日本の物流品質」を提示することで、新市場開拓の強い武器にしたい。こうした構想を描きたくなるような、日本郵船の取り組みだ。(編集部・清水直樹)