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外環道工事差し止め、物流拡充と安全は両輪だ

2022年3月1日 (火)

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環境・CSR東京地裁は2月28日、東京外かく環状道路(外環道)トンネル工事をめぐり住民が工事差し止めを求めた仮処分について、国と東日本高速道路(NEXCO東日本)などに一部区間の工事中止を命じる決定をした。首都圏における物流の効率化・最適化の観点からも、国やNEXCO東日本による今後の対応が注目される。物流インフラ拡充の観点からも、道路整備は安全を前提としたものであるべきだ。その命題を肝に銘じなければならない。

東京地裁が工事差し止めを決定したのは、外環道の東名ジャンクション(JCT)から中央JCT付近までの9キロの区間。現在進めている「気泡シールド工法」による掘削工事の実施を差し止めるものだ。

外環道トンネル工事をめぐっては、2020年10月に東京都調布市でトンネル工事現場の真上の市道が陥没。周辺住民が仮処分を申し立てていた。

外環道は、東京都大田区から埼玉県を経て千葉県市川市に至る環状道路。東京都心を囲むように環状で結ぶ道路として整備が進んでおり、すでに大泉JCT・高谷JCT間で開業している。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)とともに、首都圏から各地方へ放射状に広がる高速道路を相互に連絡する機能を果たす環状道路として、早期全通が期待されている。

特にこうした道路整備を強く求めているのが物流業界だ。外環道沿線で物流施設プロジェクトが相次ぎ、大型トラックが昼夜を問わず連なっている姿からは、首都圏における貨物輸送の大動脈として機能していることを実感する。

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現在は関越自動車道や常磐自動車道、東関東自動車道と接続する外環道だが、東名高速道路や中央自動車道とも結節できれば、東京都心を経由することなく東日本と中日本、西日本を相互に移動できる物流アクセス道路が完結することになる。消費スタイルの多様化が加速する「新しい生活様式」を見据えて、社会インフラである物流の効率化・最適化には不可欠な路線と言えるのはそのためだ。

とはいえ、今回の東京地裁による決定は、こうした道路整備の前提となる「安全性」の確保を改めて求めた。物流業界も、もちろん安全をないがしろにした道路整備を求めることはありえない。道路というインフラの充実した整備を求める立場として、社会にマイナスの影響を及ぼす道路整備は許してはならない。物流インフラの充実と道路工事の安全性は決して矛盾しない概念であることを、ここで強調しておく必要があるだろう。