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DHL、シンガポール航空と東南アジア物流で連携

2022年3月15日 (火)

国際独DHL Express(DHLエクスプレス)は、シンガポール航空と乗務員整備契約を締結したと発表した。専用のボーイング777貨物機(B777F)5機を配備。DHLエクスプレスは大陸間航空ネットワークのさらなる拡充を図り、急速な成長を遂げる国際エクスプレス輸送市場において高まる顧客需要を取り込んでいく。

シンガポールのチャンギ空港を拠点とし、DHLが新たに「南アジアハブ」と位置付ける今回のサービスを提供。貨物機には、DHLとシンガポール航空両社ロゴのカラーリングを施し、シンガポール航空が北アジアを経由する米国行きの路線を運航する。機材のメンテナンスもシンガポール航空が行う。専用機の納入は、初号機がことし7月で2号機が10月、残りの3機は23年中の予定だ。

▲両社のロゴがペイントされた貨物機B777F(出所:DHLジャパン)

DHLエクスプレスのトラビス・コブグローバルネットワークオペレーションズ&アビエーション担当エグゼクティブバイスプレジデントは「ボーイング777貨物機5機の投入により、アジア太平洋地域と米州を結ぶエクスプレスサービスの強化が可能になる。新型コロナウイルス感染拡大以降、太平洋横断路線は強い成長見通しを示しており、シンガポール航空との今回の協力は、共通の価値観を持った最高水準のオペレーションを行う長年のパートナーとの長期的な関係を構築する絶好の機会と捉えている」とコメントした。

▲(左より2人目から) DHL Expressグローバルネットワークオペレーションズ&アビエーション担当EVPトラビスコブ氏、DHL Expressアジア太平洋地区CEOケンリー氏、シンガポール航空コマーシャル担当EVPリーリクシン氏(出所:DHLジャパン)

東南アジアは世界の物流市場の「台風の目」になる、それを見据えたDHL

世界でも屈指の成長市場である東南アジアへの進出を本格化させたいDHL。旅客事業と両輪を成す貨物事業の事業基盤を固めたいシンガポール航空。両社の意向が合致した形で、今回のパートナーシップ拡充は実現することとなった。

シンガポールのフラッグ・キャリアとしての立場から、欧州とオセアニアを結ぶ乗り継ぎ客を重視した路線網を築くなど、世界有数の航空会社として多くの旅客を輸送してきたシンガポール航空は、子会社のシンガポール航空カーゴがルフトハンザカーゴなど親密な航空貨物会社と連合を構成するなど、世界トップクラスの輸送実績を誇る。

(イメージ)

米国で設立されたDHLは、ドイツポストの傘下に入ってからは欧州を拠点にグローバルの総合物流企業となった。しかし、事業領域は欧米を中心とする先進国を中心としており、東南アジアなど新興国への本格的な参入は途上にあったと言ってよい。

今回のパートナーシップ拡充は、世界における当面の物流マーケットは、こうした東南アジアが主役の一角を握っていくという事実を示唆している。東南アジアは新型コロナウイルス感染拡大という世界的な経済へのダメージを考慮しても余りあるほど、成長余力が大きい。シンガポール航空としても、シンガポールを世界における物流ハブと位置付けることで新たな視界が広がれば、ビジネスの拡充によるさらなる収益体制の構築につながる。

DHLとシンガポール航空による協業の動きは、成長市場におけるビジネス機会の獲得という目的がある。国内の物流企業におけるグローバル展開にも大きな影響を与えるのは間違いない。(編集部・清水直樹)