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ニチレイロジ、物流拠点の接車時間を完全予約制に

2022年3月31日 (木)

フードニチレイロジグループ本社(東京都中央区)は3月31日、国内30か所の物流センターでトラックバース予約システムを活用した入庫車両の接車時間の完全予約制を開始したと発表した。「物流の2024年問題」の要因の一つである、物流センターにおけるトラック待機問題の緩和・解消を図る狙い。

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物流の2024年問題は、働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、トラックドライバーに対する年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する諸問題を指す。年間時間外労働時間の上限が発動されることでトラック輸送の担い手や時間が減少し、製品を作っても運べない「物流難民」が発生する懸念もあり、輸送業界はドライバーの確保とともに業務効率化への対応を迫られているのが実情だ。

物流センターにおけるトラック待機は、ドライバーが荷下ろしや積み込みを行うまでに長時間待機・拘束されることから社会的な課題となっています。こうした問題が生じる要因として、物流センターに到着した順番で入出庫対応をしている現状がある。

乗務員は少しでも早い順番を確保しようと物流センターの営業開始時間より前に到着するため、長時間の待機が発生。物流センターのトラックバースはスペースが限られていることもあり、朝方など到着車両が集中する時間帯には車両台数が入出庫作業の処理能力を超えてしまうため、待機車両の発生につながっており、ドライバーの就労環境の悪化につながるほか、近隣の住環境にダメージを与える要因にもなっている。

ニチレイロジグループが導入を進めるトラックバース予約システムは、物流センターごとに設定された時間帯別の接車可能枠に対して、荷主や運送会社が入庫希望時間を予約できる仕組みで、順番確保のための待機が不要になる。

▲導入前後の物流センター周辺の待機車両状況(出所:ニチレイロジグループ本社)

さらに、ドライバーから運送依頼書や送り状などの積荷明細を物流センターへ事前に送付することで、これまでトラック到着後に行っていた運送会社やオーダーの照合を前もって実施できるようになり、到着からトラックバースへの誘導をスムーズに行うことが可能になる。

先行してシステムを導入している物流センターでは、完全予約制の導入前は7割の車両に2時間以上の待機が発生していたが、導入後は9割以上の車両の待機時間を30分以内に短縮することができた。深夜・早朝時間帯の待機車両や物流センター周辺における駐車車両の削減、バース接車時間の確認連絡を減らせたことによる受付事務の負荷軽減などの効果が出ているという。

持続的なサプライチェーン構築の「原点」に光を当てる取り組みだ

物流センターの周辺に大型トラックの長蛇の列ができる光景も、過去のものになるかもしれない。そんな期待が現実になりそうな取り組みを、ニチレイロジグループが本格化させる。背景には、ドライバーの就業環境の悪化がサプライチェーンの確保・強化を阻む要因になりかねないとの強い危機感がある。

(イメージ)

物流ドライバーを敬遠する風潮は、長時間の拘束が大きな要因とされている。荷物の取り扱いに要する時間だけでなく、その現場である物流センターへトラックを乗り入れるのに相当の時間を要するのが実情で、しかもその時間は長くなる傾向にあるという。

消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染拡大による宅配需要の高まりなどで、荷物の絶対量が増加し、既存の物流センターの処理能力を超えているからだ。巨大な物流施設が相次いで開発されているのは、こうした事情を反映したものだ。

それでは、こうした課題に対応する実効的な策とは何か。当然ながら、物流センターが大きくなることで全てが解決するわけではない。荷物を運ぶドライバーが確保できなければ、サプライチェーンは機能しない。まさに「鶏が先か卵が先か」の話だ。

そのためには、ドライバーの「仕事のやり方」を抜本的に見直す必要がある。当たり前のことなのだが、意外にもこのポイントに焦点が当てられてきたとは言い難いのが実情であり、ドライバー不足という事態を引き起こした一因でもあるだろう。

ニチレイロジグループの取り組みは、こうした持続的なサプライチェーン構築の「原点」に光を当てた取り組みと言える。(編集部・清水直樹)