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22年度スタート、入社式でトップは何を語ったか

2022年4月1日 (金)

話題2022年度がスタートした1日、全国の物流関連企業が入社式を実施し、次の世代を担う新入社員が緊張の面持ちで参加した。各社の経営トップが語った歓迎の挨拶からは、若者への強い期待とともに、これまでにない変革期を迎えている物流業界で生き残りをかけた“戦い”に勝ち抜く新ビジネス創出の「同志」に訴える強い危機感も垣間見えた。各社トップのメッセージをキーワードで拾ってみた。

「企業は戦っている」

▲SBSホールディングスの鎌田正彦社長

「企業は日々戦っている。戦いに負ければ、その先に待っているのは倒産であり、負けて悲しむのは従業員だ。だから企業は、利益を出し続けるために皆で一緒に戦う必要がある」

新入社員を前に、こう強い言葉を投げかけたのは、SBSホールディングスの鎌田正彦社長だ。本社機能の東京都新宿区への移転とともにグループ各社の本社オフィスも集約。グループのスローガン「For Your Dreams」(フォー・ユア・ドリームス)を引き合いに出しながら、誰も見たことのない世界を、SBSグループの一員として一緒に作り上げていこう」と強調した。

私たちの使命、それは「輸送立国」だ

西濃運輸(岐阜県大垣市)の小寺康久社長は、物流従事者が果たすべき使命について「輸送立国」という独特のフレーズで新入社員に訴えた。地震などの自然災害や新型コロナウイルス禍など、生活を揺るがす出来事が次々と発生するなかで、社会に不可欠なインフラとして物流網を維持したのは、エッシェンシャルワーカーである輸送ドライバーだった。

「我々の仕事は有事にこそ真価を問われる。我々の仕事がいかに社会から必要とされているのかを再認識して、社会に貢献しようとの気概を持って業務に取り組んでほしい」。小寺社長は荷物とともに「すべてのひとに笑顔と幸せを届ける」大切さを語った。

「なぜ我々は長い間、存続できたのか」

▲日本郵船の長澤仁志社長(出所:日本郵船)

三菱グループの源流企業の一つであり、ことしで創業137周年を迎える日本郵船。長澤仁志社長は、幾多の困難を乗り越えつつ世界経済の発展に貢献し、人々の生活を支えてきた歴史をひも解きながら、「ではなぜ、われわれは137年という長い間、存続できたのでしょうか」と問いかけた。

長澤社長はその問いの答えとして、「日本郵船グループが、その時々の社会からの要請に常に応えてきたから」と説明。明治時代の外航航路の開設から戦後の高度成長期における輸出入業務、そしてコロナ禍における医療物資や生活必需品の輸送など、社会の発展を支えるとともに危機を救う取り組みを継続してきた歴史の重みを訴えた。

「進取の気性」で挑戦しよう

▲川崎汽船の明珍幸一社長 (出所:川崎汽船)

「従来の発想にとらわれない『進取の気性』で果敢に新たな取り組みに挑もう」と呼びかけたのは、川崎汽船の明珍幸一社長だ。

カーボンニュートラル社会の実現に向けた機運が高まるなかで、海運業界は船舶輸送などにおける脱炭素化を推進。その代表格が川崎汽船だ。明珍社長は、こうした未知の取り組みを推進するためには、謙虚に業務に取り組む姿勢を大切にしながら、視野を広げて変化を先取りする発想が必要と強調した。

「学びをやめず、夢を持とう」

「身近な物事への関心や思い付きがきっかけで形となっているモノも多く存在する。私の言う学びとは、そうしたきっかけを見つけること、物事に疑問を持つこと、そして好奇心を持って飛びつく姿勢だ」。三井倉庫ホールディングスの古賀博文社長は、「学ぶ」姿勢を忘れないことが社会に必要とされる企業の一員となるための条件だと説いた。

それを踏まえて「現世とは現実の世、それを忘れずに未来へ向けて理想を追い求めて欲しい」と夢を持つ大切さを訴えた。新入社員にとって現世とは、まさに「配属先での仕事に一生懸命取り組むこと」。そのうえで「この先この会社でどうなりたいか、何をしたいかを考えて諦めずに努力し続けて欲しい」と締めくくった。

将来の物流を支える新入社員、トップの「思い」を受け止めて

コロナ禍の収束も見通せないなかで、2022年度が始まった。真新しい服装に身を固めた落ち着かない面持ちの新入社員が街にあふれた。物流業界でも、さまざまな職種の新入社員が新たに企業の仲間になった。

社会人の仲間入りをした新入社員が現場の最前線で活躍するころには、物流の姿はどんな変革を遂げているのだろうか。

(イメージ)

物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化がさらに加速し、物流倉庫は最小限の作業員がシステムを管理する以外はロボットや先進システムが自動で作業を担う光景が当たり前になっているかもしれない。海上輸送も、もはや船員のいない無人航行が実用化されていても不思議ではないだろう。

一方で、物流機能が社会の危機を救う局面がさらに生まれている可能性もある。来るべき南海トラフの大地震は、東日本大震災と同等以上の経済損失をもたらすとの試算もある。物流の形は変われども、社会に不可欠なインフラとしての機能は高まりこそすれ、消失することはありえない。

こうした未来を思い巡らせると、新入社員に贈られた経営トップのメッセージの真髄が、いかに胸を打つかがよくわかる。果たして、新入社員にそれが届いただろうか。(編集部・清水直樹)