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中小運送業が挑むモーダルシフト・湯浅運輸【下】

2022年7月28日 (木)

▲モーダルシフトの手応えを語る湯浅運輸の湯浅昇社長

環境・CSR茨城・九州間の長距離輸送で、試験的に一部をトラックから海上輸送に切り替えた湯浅運輸(茨城県日立市)。ことし5月に始めた試みは、モーダルシフトが地方の中小企業にも本格的に広がるかどうかを占う試金石になりそうだ。同社の湯浅昇社長に、この3か月で見えてきたモーダルシフトの効果と課題を聞いた。(聞き手・東直人)

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––長距離輸送のトラックを東京港で商船三井フェリーのRORO船に乗せ、福岡県の苅田港までの約1000キロを「航送」するモーダルシフトを始めて3か月。手応えはどうか。

「以前から検討してきた航送がようやく実現できたという感慨がある。一方、いくつか課題も見えてきた。本格実施に移すには、もう少し試行を続ける必要がある」

若手は順応、丸一日の乗船に戸惑うドライバーも

――ドライバーの反応は。

「『物流の2024年問題』対策として、長時間労働を解消するという目的を理解してくれた。この航送の仕事をしたのはまだ数人だが、若手の方が順応しているようだ」「片道25時間半という乗船時間を持て余し、戸惑うドライバーもいる。RORO船の乗客定員は12人。フェリーと違い船内に娯楽施設や食堂、売店がない。船内で4回とる食事も冷凍食品などで良いのか、対応を検討中だ」

––ドライバーの乗船中の賃金は、どのような扱いになるのか。

「茨城・九州間をトラックで陸送した場合と同じ賃金にしている。実労働時間は減っても、船内に拘束しているためだ」

––モーダルシフトの結果、収支はどう変わったか。

▲茨城県日立市の湯浅運輸

「燃料代と高速道路料金が大幅に減り、船賃(航送料金)が新たに生じたわけだが、輸送一回あたりの利益は陸送だけの時より少し減っている。一方、トラックのタイヤの摩耗や車体の痛みも減るだろう。トータルの損得は、もう少し続けないとわからない。なんとか陸送並みの利益率に収まればと思う」

カギ握る燃料サーチャージ

––モーダルシフトは燃料高対策としても有効か。

「トラックの軽油は減るが、船賃に上乗せされる燃料サーチャージ料金が小さくない。4半期ごとに改定されるのだが、これが値上げされると苦しい。ただ、ドライバーの労働時間軽減のほか、事故リスクが減るメリットもあり、単純な収支だけでは是非を判断できない」

▲RORO船のパンフレットを見ながらトラックの「航送」を説明する湯浅昇社長(左)と関川俊道部長

––荷主の反応はどうか。

「モーダルシフトを荷主も理解してくれ、ありがたいと感じている。東京港での出港時間という時間軸が加わったことで、荷主も荷物の用意が遅れないように配慮してくれている」

––今後の展開は。

「関西まで陸送し、大阪や神戸でトラックを船に乗せる手法もいずれ試したい。従業員たちと一緒に考えながら課題に取り組みたい」