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首都高の特徴踏まえた運転を、トレーラー事故多発

2022年10月12日 (水)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「高速隊と首都高、海コン部会に事故防止の注意喚起」(8月18日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

環境・CSR首都高速道路で大型トレーラーによる重大事故が多発している。警視庁と首都高会社(東京都千代田区)が8月17日に関東トラック協会に会員事業者への注意喚起を要請したが、その後も事故は続いている。首都高会社に事故防止のためのポイントを聞いた。

JCTやカーブに注意

首都高会社によると、長時間の通行止めを伴う大型トレーラー事故の件数は、2022年度上半期(4-9月)ですでに前年度1年分を超えた。過去3年の年間件数の平均も上回り、急増ペースとなっている。

同社が首都高を走るすべての大型トレーラーの運転手や運送会社に向けて、強く注意しているのが「大型車の事故はジャンクション(JCT)付近で多い」という点だ。7月13日に大型トレーラーが道路脇の施設に接触し、2時間の通行止めに至った事故も中央環状線(内回り)堀切JCTで起きた。同社がウェブサイトの「首都高ドライバーズサイト」で公開している大型車事故多発地点マップを見れば一目瞭然。2021年4月からの1年間では、板橋、熊野町、竹橋、小菅、堀切、江戸橋、箱崎、有明、大橋、西新宿の各JCTで大型車の事故が多発した。時間帯としては午前中に多い傾向があるという。

■大型車事故多発地点マップ
https://www.shutoko.jp/use/safety/map/big/

同社は、首都高の特長を理解した上での運転を求めている。ドライバーズサイトにもまとめてあるが、首都高には他の高速道路とは違う、構造と交通の流れに大きな特徴がある。

(イメージ)

構造特性としては、まずカーブが多い。JCTもカーブだ。長さが十数メートルある大型トレーラーは、小・中型車以上にカーブに注意を要する。見通しの悪いカーブの先に渋滞の末尾があることも少なくない。7月29日には5号池袋線下りの西台カーブ付近で横転事故が発生し、通行止めは10時間に及んだ。カーブが多いのは、昭和の高度経済成長期の建設事情に由来する。密集市街地という多くの制約がある環境のなかで、公共用地を伝いながら突貫工事で建設されてきた。他の高速道路とは異なり、必ずしも運転しやすい道ばかりではないのが実情だ。

さらに、巨大都市ゆえに出入り口やJCTが多く、分流や合流も他の高速道路より頻繁にある。車線変更をする機会も増える。基本的なことだが、急な車線変更は禁物で、前後左右をしっかり確認し譲り合うことが、首都高では一層重要になる。

なお、分流・合流のために右側の車線を走ることは問題ないが、道路交通法の定めで左側通行の原則は首都高にも適用される。理由なく一番右側を走り続けることができないことも、首都高会社は注意を呼び掛けている。

ドライバーズサイトを活用

こうした構造特性に加えて、1日100万台の車が利用するという交通密度がある。東京外かく環状道路(外環)や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)など首都高の迂回ルートも整備されてきたが、それでも全国に比類のない交通密度が続いている。

事故削減に向け、これらの構造や交通の流れの課題を克服するため、首都高会社では交通量の変化や渋滞量の変化、事故要因などを加味してソフト、ハード両面の対策を不断に実施している。ドライバーズサイトなどのウェブサイトやチラシなどで周知される案内を、気を付けて見ておくことが大事だ。

■首都高ドライバーズサイト:首都高の特長を踏まえた運転を
https://www.shutoko.jp/use/safety/driver/02/

(イメージ)

首都高広報課は最後に、大型トレーラーの事故の主な原因を改めて指摘し、基本の順守を呼び掛けた。それは「スピードの出し過ぎ」「急な車線変更」、そして「過積載」の3つ。中でも過積載状態での走行は制動距離が伸びたり、カーブで曲がり切れないなど大変危険だ。首都高に限った話ではなく、規定の積載重量を守ることは運送事業者の基本ルールだ。

首都高広報課のコメント「大型トレーラーの事故は重大事故となる場合があり、自身のみならず、他にも被害が及ぶこともあります。気象状況の変化等に合わせて適切な速度で走行いただきますよう、お願い申し上げます」

首都高などから注意喚起の要請を受けた全日本トラック協会(全ト協)と関東トラック協会の両海上コンテナ部会では、10月21日に東京都内で関東ブロックの会員向けに安全輸送講習会を開く。国土交通省安全政策課の職員が講師を務める。全ト協は他の地域の高速道路での事故も防ごうと、全国各ブロックごとの開催も検討している。