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SBIリースと丸紅、高騰LNG船の難しいリースを実現

2023年3月27日 (月)

M&A船舶や航空機のオペレーティング・リースを手がけるSBIリーシングサービス(東京都港区)は24日、丸紅と共同で、ノルウェーの大手海運会社、FLEX LNG(フレックスLNG、登記上の本社はバミューダ諸島)との間でLNG(液化天然ガス)運搬船のリース契約を結んだと発表した。LNG運搬船の価格が高騰する難しい状況の中で、いくつもの企業や金融機関の知見を持ちより、ESG(環境・社会・ガバナンス)を推進するリースを実現した。2021年に買収した新生銀行(当時、現SBI新生銀行、中央区)も含まれ、SBIグループにとっても同行との協業案件の第1号となった。

(出所:SBIリーシングサービス)

発表によると、フレックスLNGはLNGの輸送事業に特化した海運会社で、LNG船を多数、保有・運航している。今回のリース案件はLNG運搬船「Flex Rainbow」(フレックス・レインボー、2018年7月建造)をリースし、ある世界大手の独立系資源商社に定期用船するというものだ。

石油や石炭に比べてCO2排出が少なく環境負荷が小さいLNGは、「環境にやさしいクリーンなエネルギー」として近年、世界各国で需要が高まっている。ところが、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、欧州諸国がロシア産LNGから脱却を図ったことで需要が一層高まり、影響でLNGを海上輸送するLNG船の市況も高騰している。1隻あたりの取引価格は中古船でも200億円を超えるという。船舶価格の高騰は、船舶リースも難しくしてしまう。

そこでSBIリーシングは、LNG船事業に詳しく関連するネットワークを持つ丸紅と組み、リース案件の組成に挑むことにした。資金の出し手にも船舶融資に強みをもつ三井住友信託銀行の招へいに成功。さらに、金融界を揺るがせた買収劇の末、2021年12月にSBIグループ入りしたSBI新生銀行も加わった。旧日本長期信用銀行を発祥とする同行もこうしたストラクチャードファイナンスを強みとする有力金融機関であり、同行自体もLNGの海上輸送に強い関心を向けていたという。同行買収が初めて果実を生んだ事例となった。

(イメージ)

SBIリーシングによると、困難な条件を跳ね返し、複数の企業と結んで船のリース案件に取り組んだのは、もちろんフレックスLNGという優良企業向けの案件ということもあるが、やはり「ESGの推進に資することを重視した」(経営企画部)という。LNGの普及を推進するほか、フレックス・レインボー自体も温室効果ガスの排出抑制の環境規制に対応した高性能エンジンを搭載しており、その運航は海運の脱炭素化につながる。同社は、今後もCO2削減などの環境対策に配慮した航空機や船舶の投資案件組成に取り組み、航空・海運会社などに競争力のあるファイナンスを提供していく方針だ。

「物流」と「環境」の接点に投資マネーの矛先を向けたという意味で、今回のリース実現は物流業界にも大いに刺激になりそうだ。海運のみならず空運、陸運など各物流分野で進められている気候変動対策など1つ1つのESG事業が、今後も有望な投資案件として投資家や金融機関に評価され続けることで、物流業界全体に安定的な資金を呼び込むものと期待される。

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LOGISTICS TODAY編集部
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