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動線設計から保管効率まで考慮した三和建設のオーダーメイド設計

冷蔵冷凍倉庫・食品工場の設計に高い提案力

2023年6月8日 (木)

話題倉庫や工場の建設に際し、生産や保管、作業、出庫、入庫の効率をよくするため、明確に要望を伝えられる担当者はいるだろうか。特に冷凍・冷蔵の温度帯管理は、ランニングコストがかかるため、自社が保管したい量にジャストフィットするスペースを設けることが理想だ。低温帯での作業を考えると、動線を整理し効率的に作業できる設計が重要となる。

コロナ禍を契機に冷凍食品の市場ニーズが高まり、注目するゼネコンも増える中、10年以上前からその市場を深く理解し、建設に携わってきた会社がある。三和建設(大阪市淀川区)だ。

三和建設は建設会社でありながら、倉庫や工場のいわゆる「箱」を建設することだけを仕事とはしていない。動線設計、保管効率、WMS(倉庫管理システム)やバース管理システムの導入、マテハン機器の連携までを考慮した提案を行い、工場・庫内の省人化や平準化に寄与している。なかでも生産、流通、倉庫のあらゆる機能が求められ、冷凍・冷蔵管理も必要となる食品工場の建設には、網羅したノウハウで提案できる強みを持つ。

「我々は単純に建物を建てるのではなく、お客様の本質をとらえ潜在的な要求を引き出すという観点でコンサルティングを行っているという意識を持っています」そう話すのは三和建設執行役員東京本店長ファクタスブランドマネジャーの安藤知広氏だ。その具体的戦略、顧客ビジネスに踏み込む理由に迫る。

▲三和建設執行役員東京本店長ファクタスブランドマネジャーの安藤知広氏

動線から保管対象物に考慮した設計で無駄を排除

そもそも営業活動として、コンサルティングに近い形を取り始めたのは、食品工場への提案がきっかけだったという。食品工場では、衛生管理のため「人」「モノ」「廃棄物」の動線が重要だ。汚染のリスクを避けながら、人が歩く距離をどれだけ短くしていくかを重点に10年以上前から提案を続けている。

▲三和建設が実施している食品工場建設におけるロードマップ(クリックで拡大)

そして生産ラインを入れるために、柱の位置を検討し効率的かつ経済的な構造計画を追求していく。物流倉庫でラックを入れる場所に対しても同じ考え方だ。

こうした建物の中の動線や保管対象物に考慮した設計をする理由について安藤氏は「よくある悪い例として、建物に合うようにラックを配列して、隙間が空いてしまうケースがあります。この隙間が積み上がっていくと、無駄な建築コストも当然かかります」と指摘する。

▲物流技術管理士の資格を持つ、小泉幹夫氏。特に業務フローの改善提案などの分野に知見があり、全体的なサポートをしている

「物流コンサルタントを専門にしている方々は、相談を受けてもすでに無駄がある状態から対応していくしかありません。我々とタッグを組んで、一緒に提案することで建築構造のメリットを提供しながら、お客様側に立った理想の倉庫や工場ができる仕組みを構築しています」(営業グループ責任者の小泉幹夫氏)

実は提案力の高さの裏側に、さまざまな専門企業との協業体制がある。そのうえで三和建設内にも、物流技術管理士を配置し、業務フローの改善提案やABC分析(商品の売り上げなどの指標を用い、優先順位を決定する方法)をもとにしたラック及び商品の配置提案などを行っている。

「余白を持たせなければ建て替える意味がない」

具体的にどのような流れで建設の提案を行うのか。千葉県柏市にあるM社移転時の施工事例を紹介したい。

▲M社物流センターの外観

当時3階建ての食品物流センター建設を予定していたところ、コロナ禍の影響で2階建てに変更になった。当時の物量と荷姿を分析し、さらに将来的に伸ばしていきたいアイテムまでヒアリング。限られた予算の中でその内容にもとづいて格納スペースを提案した。

「せっかく移転するのであれば、余白を持たせなければ建て替える意味があまりありません。4段ラックの天板うえ、5段目を移転時には使わない方向で話を進めました」(安藤氏)

▲M社物流センターの内にある入出荷前室

移転時は人の手が届く高さで効率の良いピッキングを重視し、天板うえに合計20%保管できる余白を残す。事業が拡大した際には、天板うえに優先度の低い商品を保管するか、もしくは天井高を活用し4ウェイシャトルを導入できることもあわせて提案書に盛り込んだ。

「温度帯を変える提案もしました。冷蔵庫も保管スペースとして活用する。通路幅や出荷ヤードについては、台車の寸法にもとづいて設定するため、無駄がありません。常に余力を考慮し、お客様と共有しながら設計を進めています」(安藤氏)

もちろん言うまでもなく構造や建材へのこだわり、引き渡し後のアフターフォローは整っている。そのうえで、ここまで顧客ビジネスを理解したオーダーメイドの設計ができる建設会社はいくつ存在するだろうか。

建築・システム・マテハンまでトータルコストで提案

また、とある顧客の倉庫で棚卸しの数が常に合わない、賞味期限が切れているといった現状を目の当たりにした安藤氏。「このままでは、ひたすら大きなセンターを作っていくしかないのでは…」と感じ、WMSの導入を提案したという。

WMSは主に倉庫内の在庫管理に用いられるシステムだ。建設とは一見、関係のないものと感じるかもしれない。しかし安藤氏は、建物内に効率的な仕組みを構築するうえで必要だという。

「物流センターも食品工場も建設のもととなる考え方は一緒です。どんな荷姿のモノをどれくらい保管するのか、効率よく動線を組むにはどうすればよいのか。それありきで建物面積が決まり、柱割りが決まります。お客様と打ち合わせした運用で何十年と続けていただくために、時にWMSの提案も必要な仕組みと考えています」

WMSに関しても、実際の導入に際しては協業企業から提供される。自社では表面化しなかったニーズの掘り起こしと共に、建築とシステム・マテハンのトータルコストで提案を受けられる。

顧客ビジネスの理解が規模・知名度を上回る勝機に

なぜここまで踏み込んだ戦略をとるのか。安藤氏に聞いた。

「我々は東京で60年以上やってきましたけれども、『三和建設』の名前を知らない会社さんばかりなんですよ。知名度や会社の規模で提案をはねられる経験もたくさんしてきました。その中で業界を知って専門家にならないといけないと感じたことがきっかけです。セミナー、展示会、勉強会を通じて社内育成をし、8年以上前から展示会に出て、徐々に知名度をあげてきました」

そもそも三和建設は創業76年の歴史を持ち、サントリーやニチレイフーズなど大手企業の建設実績もある。一方で、社員数としては165人(2023年5月時点)。手の届く範囲で成果をあげてきた。

「競合にあたるのは大手ゼネコンですから、知名度や規模感で提案を選ぶお客様がいらっしゃるのも当然です。彼らのマンパワーにもかないません。しかし提案内容には自信があります。そこに共感していただけるお客様だけと仕事ができればいいと思っています。将来を見据えて当社を戦略的パートナーとして頼って頂ける企業様と仕事がしたいという思いが強いです」

着実に引き合いが増える中で、営業の一環としてではなく、コンサルタント業務単体での受注も始めている。

汎用性か、こだわりか

▲設計事務所と三和建設の提案内容の比較(クリックで拡大)

コロナ禍におけるEC需要の拡大に伴い、デベロッパーが開発する物流施設が増加した。入居者を選ばないよう高い汎用性が意識されている。一部BTS型と呼ばれるオーダーメイド設計の仕様もあるが、賃貸である特性上、一定の汎用性を残さざるをえないだろう。

一方、商品の特性や在庫量を加味すれば、個社別の最適解は異なる。三和建設は「お客さまにとって“つかえる建物”を提供する」をミッションとし、施主と伴走しながら最適解を目指す。汎用性では拾いきれないニーズに応えていく。

顧客のビジネスを理解し、建設に付加価値をつける同社は、パートナーとしてオンリーワンの存在となりえるだろう。特に自社工場、自社物流のために建築を検討するのであれば、数十年に一度の機会になるかもしれない。パートナー選びに後悔しないよう、三和建設の提案を受けてみて損はないはずだ。

三和建設「FACTAS」(ファクタス)詳細
三和建設「RiSOKO」(リソーコ)詳細