ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

イオンモール、共同配送を早期の全国展開へ

2023年12月27日 (水)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「イオンモール、共同配送サービスのエリアを拡大」(2023年12月8日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

拠点・施設生活に馴染み深い商業施設、イオンモール(千葉市美浜区)が、物流面で大きな動きを見せている。今年導入したばかりのテナント企業への共同配送サービスを、2024年度中には全国展開する計画を明らかにした。燃料費の高騰など、物流コストがかさむ情勢は、テナント企業にも大きく影響を及ぼす。コストを少しでも抑えたいテナント側の要望の高まりに寄り添ったサービス展開だ。本業となる商業施設での新規出店抑制や、店舗縮小などへと余波が出ることを防ぎたい狙いもある。

(イオンモール)

イオンモールは、イオングループの中核を担い、ショッピングセンターなどの開発、運営を手掛ける国内有数の企業。国内に160超の施設を展開し、テナント企業は8000社に上る。

イオンモールの物流担当者は取材に対し、テナント企業が抱える現状の課題について「物流費を含む費用の高騰のほか、人材不足を良く聞く」と回答した。

イオンモールがサービス導入に至った主な理由は、テナント企業にも大きな影響を及ぼす24年問題や燃料費高騰などへの対策だ。

イオンモールの物流担当者は、取材に対し、こうした問題を挙げて、「物流課題によって、出店者の物流費が高騰し、その結果、出店者が新規の出店を見合わせることや店舗を縮小されることは、当社の本業に大きな影響を与える」と懸念を示した。

こうした背景から、イオンモールが23年2月に導入したのがテナント企業への共同配送サービスだ。ファッション物流、アパレル物流に強みを持つ浪速運送(大阪市西区)と連携する。
イオンモール側は、このサービスを構築するにあたって、さまざまな運送企業と交渉するなどしてきたという。そのなかで、「最も早く構想に賛同いただいた」(イオンモール)企業だった浪速運送との連携に至ったという。

サービス提供するのは、各テナント企業に対して、物流拠点からテナント店舗などまでの配送や、店舗から店舗などへの店舗間配送、さらには店舗から物流拠点への返品配送だ。
テナント企業は、使い方次第で配送費を大きく削減できるメリットがある。

イオンモール側も「物流費の抑制に貢献することができれば、当社にとっても出店企業にとってもメリットがある」と指摘する。

燃料費高騰などへの対応に課題を抱えるテナント企業を物流面で支援することで、本業での余波を最小限にとどめたいイオンモールの配慮が見えてくる。

そこで、地域限定で導入したのが近畿エリアの5府県、東海エリアの2県の計7都府県。
「このエリアに倉庫を持つ企業や当社の施設が多かった」(イオンモール)ことが、同エリアを選んだ理由だという。

さらに、10月には、北海道・東北エリアの1道5県、関東エリアの1都3県、甲信越・北陸エリアの3県、中国エリアの3県、九州エリアの1県の計17都県を追加拡大させた。

イオンモールの物流担当者は「エリア拡大は、運送パートナーである浪速運送とサービス開始当初から検討を続けてきた」としており、10月からのタイミングについて「両社の体制が整ったため」(イオンモール)だとしている。

さらに、24年度中には、北関東や南九州など残りの半分ほどの地域にも広げて全国展開にする予定だ。
導入からわずか1年ほどでの展開を、イオンモールは「利用する企業やエリア対象外の企業からの要望が多かったため」と明かす。

早期展開して、さらなる利用企業を増やすことを目指していく。
イオンモールの物流担当者は、全国展開について「浪速運送側の体制が整い次第、行う」と説明した。
今後も、新しいサービスの創出に向けて「両社がタッグを組んで検討していく」(イオンモール)という。

共同配送という形態で、新たな物流サービスを導入したイオンモールだが、物流担当者は「物流という視点から新しいビジネスを検討できるようになる」といった点をメリットとして挙げた。

一方で、「新規分野でのビジネスであるため、未知のリスクが潜んでいる可能性がある」点をデメリットとして指摘した。