話題EC(電子商取引)の需要拡大、庫内作業者をはじめとする人手不足などで、倉庫の自動化・省人化に向けた多様なソリューションが提案されている。
EC事業での事業成長を目指して、自社物流に取り組みたいと考える事業者や、自社物流を始めるにあたっての倉庫や人員の調達、運用やコストでの不安を感じる事業者にとって、多種多様なマテハンからどれを選定するかだけでも、多大な時間と労力が必要となる。まとまったコストも必要となる「失敗できない改革」にはそれだけの覚悟が必要となることも、自動化における高いハードルである。また、すでに自社物流に踏み出した事業者にとっても、時流に合わせた運用の変更や、さらなる効率化などで課題を解決できないままというケースも多いのではないだろうか。
人材派遣だけでなく、自動化導入だけでもない新たな物流提案
EC、小売、物流施設向け自動化ソリューションやロボットピック技術を開発・提供するROMS(ロムス、東京都品川区)と、総合人材サービスのキャコムグループで、倉庫サービス・倉庫内サービスを展開する3PL事業、ロジテック(港区)の連携は、そんな企業にとっての道先案内となる協調事例と言えるだろう。

▲ROMSが開発する小型自動倉庫「Nano-Fullfillment Center」
ロムスの強みは、小型の自動倉庫システム開発にこだわり、小型自動倉庫、ロボットピックを組み合わせた小さなフルフィルメントセンター(Nano-Fullfillment Center)など各種自動化ソリューションを構築する開発力にある。人とロボットの協働によって昼夜を問わない高効率稼働を実現し、生産性を極大化させる機能を提供できる。
また、ロジテックは、キャコムグループの派遣人材事業を基盤とした3PL事業として、人や場所などのリソースを、物流業界に最適な形で展開できる適応力と柔軟性に強みを持つ。自社倉庫での、仕分け・梱包・組み立て・保管など、短期物流における多様なサービスを提供し、3PL、運送、倉庫など豊富なネットワークによる物流プラットフォーム「ロジパレ」による、物流アウトプットへの対応力を備える。
両社の連携で実現するのは、ロジパレが提供する倉庫サービス・倉庫内サービスに、ロムスの小型自動倉庫、ロボットピックを掛け合わせた、新たな物流サービスの提供である。ロジテックは、人材サービスに基盤をおいた物流サービスで、イレギュラー案件や波動にも対応できる強みを持つが、これからの持続的な物流現場の構築には、人材サービスだけに頼らない新たな解決提案、価値提供と、それを形にできる連携を必要としていた。
一方、ロムスとしては、ロジパレの倉庫などの豊富なパートナーネットワーク、派遣人材リソースを活用して、自動ソリューションの生産性と機能性の高さを実証する「人とロボットの協働」領域を広げることが期待できる。大規模な設備だけではなく、柔軟性の高い自動化ロジテックの倉庫内サービスにロムスのソリューションが連携することで、自動化・省人化業務の正確性向上、時間によらない作業が可能となり、生産性を最大化した新たな物流体験を提供できる。

▲「Nano-Sorter バッファ付モデル」
ロムスとロジテックは、ことし1月に業務提携を発表し、ロジテックが平和島に新たに開設する新物流センターへ、ロムスの高速立体型ピース仕分け機「Nano-Sorter バッファ付モデル」を導入することを発表、ロジテックの現場で連携を実運用に落とし込む準備を進めている。2社の連携は、各々の強みをお互いに活用することで精度を高め、人材サービス企業と自動化マテハンメーカーの連携という新たな枠組みから、さらにもう一歩先、もう一回り大きな連携拡大の核となることを目指す。
2社の連携が、オペレーションの生産性向上・作業精度向上にどんな成果を残し、利用者にどんな新しい物流体験を提供するのかなど、8月23日に開催される「第2回物流DX会議」では、今後の方向性と目標なども紹介される。互いの得意領域をさらに強化する連携、不得意領域を補完して総合力を強める連携など、連携に求める効果はさまざま。今回の2社連携から見えてくるこれからの物流現場の「可能性」から、多様な物流関係者が協働を模索する、そんなヒントを得ることができるだろう。
ロムスは、今回の連携で、「ロジテックの持つ豊富なネットワーク上にある既存の大規模自動化設備が導入できないような小・中規模設備とマッチングできることで自動化ニーズが広がる」こと、ロジテックは「3PL事業サービスに新たな付加価値を創出することができるのが今回の連携。優れたソリューションを優れた運用で、その価値と効果を最大化できる」と、ただ足し算に終わらない連携効果に自信をのぞかせた。