話題全日本トラック協会(全ト協)は来年6月の通常総会をもって、坂本克己会長が会長職を辞任、現愛知県トラック協会会長兼全ト協副会長の寺岡洋一氏が会長に就任する。副会長らによる満場一致の賛同を得て、後任に抜擢された寺岡氏は1956年生まれの68歳。坂本会長よりも18歳も若い組織トップの誕生は世代交代の象徴との呼び声が高い。今後の組織内の刷新や改善、改革に期待する声が高まっている。果たして、寺岡次期会長はこれからのトラック業界についてどんな青写真を描き、辣腕を振るおうとしているのか。会長に指名されて間もない寺岡次期会長に話を聞いた。
「私は運命論者でしてね。運命にね、逆らって生きたところで、ろくな結果にならない。今回の会長職の指名もひょっとして、何かのおぼしめしに違いないと腹を括って、受け入れることにしました」と笑みを浮かべる寺岡氏。
「坂本会長はやはりすごい人です。僕、怪物って呼んでるんですよ。しかしね、怪物なのですが、業界内の英雄でもある。異次元の人脈と突破力がある。それに加えて、すごい繊細な気配りのできる方。この方の後任は大変だろうなと高をくくっていたら、まさかの自分です。究極のボランティアにチャレンジする、そんな思いですね」
全ト協副会長に就任してから6年目になる寺岡氏。これまで主に、道路委員会委員長として、高速道路や重要物道路といった道路や今も全国に20か所以上残るサービスステーションなどの業務施設を担当してきた。ことしの4月から90キロに引き上げた高速道路の最高時速の規制緩和、2車線から4車線の拡充問題などに心血を注いできた。
「特に道路は私たちにとって命です。高速道路の料金や深夜割引の問題、SA、PAの課題など、これらは全ト協にとって、肝になるテーマです。会長に就任してからも、改善に向けて取り組んでいきます」
中でも、寺岡氏はETCの深夜割引は最大50%を目標にして、改善に取り組んできた。3万円超過分からしか割引対象にならない問題点について、国土交通省などとの交渉に臨んできた。3万円を含まない限り、割引率が決して50%にならないからだ。
「海外ではフリーウェイが当たり前の今、日本の道路は世界一料金が高いと言わざるを得ません。それについて、先生方はトラックが道路に負担をかけている以上、高い料金はやむなしとの意見です。そうした運送側に負担を強いるだけの現状を変えなければなりません」
「毎年、補正予算ですよね。なぜ、通常予算ではないのか。議員や国交省を含む省庁にお願いに回った結果、毎年、補正予算に落ち着くのはどうも解せません。人間の体に例えるなら、道路はまさに体内を循環する血流です。国民生活を支える国力であり、道路は国の命とさえ言う政治家もいます。その国の血流を往来するドライバーが負担を強いられることなく、安全に、高速道路をフル活用できるよう、これからも頑張っていきたいですね」
働き方改革の影響による物流業界のドライバー不足やコスト増加問題など、2024年問題が顕在化する中、寺岡氏のリーダーシップがさらに必要になる。今後、寺岡氏の手腕に期待がかかる。