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荷主各社、年末繁忙期に向けて車両確保前倒しも成果上がらず

輸送力供給追いつかず、「物流クライシス」再発の懸念

2024年11月1日 (金)

ロジスティクストラック輸送の需給バランスが崩れている。ことし春以降、荷物に対してトラックの供給が追いつかない需要過多の状況が続く。出荷量がピークを迎える年末繁忙期に向けて、荷主各社は運び手の確保に奔走しているが、思うような成果を上げられていないのが実情だ。慢性的なトラック不足を背景に、市場では荷物の配達遅延などが発生する「物流クライシス(危機)」の再来を危惧する声が高まっている。(編集委員・刈屋大輔)

関西に本社を置く中堅物流会社は、トラックによる実運送のほかに、運び手と荷物をマッチングする求荷求車サービスを提供している。同サービスはスタート以来、収益が順調に伸びていたものの、今期は初めて前年度比マイナスで着地する見通し。「輸送の需要は底堅いが、肝心のトラックが集まらず、マッチング率が低下している」(同社社長)ことが影響している。今春以降、荷物情報が車両情報を上回る状況が続き、10月に入ってからは需給のギャップがさらに拡大する傾向にあるという。

(イメージ)

関東のメーカー系物流子会社は、拠点間輸送を担うトラックの確保に苦戦している。とりわけ不足しているのは長距離輸送の大型トラックだ。同社では従来よりも10-20%高い運賃を提示したり、有料高速道路の利用を認めたりして、トラック運送会社に協力を要請している。それでも、なかなか仕事を引き受けてもらえないのが実情だ。

同社では、親会社からの依頼で全国の取引先に製品を届けている。輸送力を提供できずに親会社のサプライチェーンを止めてしまうことが許されない立場だ。そのため「親会社との契約の範囲内に収まらない“逆ザヤ”の運賃でトラック輸送を調達するケースも少なくない」(同社社長)。

その結果、協力運送会社への下払い費用が増加し、利益が目減りしている。同社ではこれまで、拠点間輸送の8割を外部に委託してきたが、今後はその方針を見直す。自前で車両とドライバーを用意し、傭車比率を徐々に下げていく計画だ。

残業規制で「より稼げない」仕事に

国内トラック輸送市場は、荷物の需要に対して車両の供給が追いついていない、いわゆる“需要過多”の状況が続いている。ことし4月に年間残業時間の上限規制が強化され、トラックのハンドルを握る仕事が「より稼げない」職種となり、ドライバーのトラック離れが加速していることが背景にある。

車両数がドライバー数を上回る“トラック余り”の状態に陥る運送会社も増えている。それだけドライバー不足は深刻だ。「ドライバーを募集しても反応が悪く、新規採用で退職者数を補うまでには至らない。あまりにもドライバーが足らなすぎて、すでに半年以上稼働していない車両が10台以上ある」(関西の中堅物流会社社長)という。

実際、ドライバーの欠員補充は容易なことではなさそうだ。厚生労働省が10月1日に発表したことし8月の有効求人倍率は、全業種平均が1.23倍であったのに対し、トラック運転手を含む「自動車運転従事者」の有効求人倍率は2.75倍(パートを除く)に達した。ことし4月以降、同倍率は2.57倍(4月)、2.56倍(5月)、2.64倍(6月)、2.72倍(7月)と緩やかに上昇する基調で推移しており、改善の兆しは見られない。

(クリックで拡大、厚生労働省「一般職業紹介状況」より引用)

言い値での委託も覚悟

ドライバー不足に伴う輸送力の低下には、年末年始にかけて出荷がピークを迎える荷主各社も危機感を募らせている。

関東に本社を置く食品メーカーでは、通常月の3倍にまで膨れ上がる12月から翌年1月にかけての出荷に対応するため、例年は10月にトラック輸送のブッキング(予約)を開始する。しかし、ことしは8月に前倒しした。今春以降、トラックの確保が難しくなってきていることを肌で感じているからだ。

もともと年末年始の繁忙期は通常月よりも運賃を上げてトラック輸送を調達してきたが、ことしは例年以上の上げ幅を提示している。それでもトラックは集まらない。9月末時点で、需要の見込みに対する充足率は2割程度にとどまる。「トラックが見つからないので製品を届けられませんというわけにはいかない。最終的には、運送会社側の“言い値”をのんででも運んでもらう覚悟だ」(同社の物流部長)という。

トラック輸送力の不足は日を追うごとに深刻さを増している。ドライバー確保が難航している運送会社の現状を踏まえると、当面その状況が改善される可能性は極めて低いと言えるだろう。諦めムードが漂い始めている市場では、まもなく訪れる年末年始の繁忙期に、荷物の大幅な配達遅延や荷受け量制限などを余儀なくされる「物流クライシス」に再び見舞われるのではないか、と危惧する声が上がり始めている。

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