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仕事の魅力伝え、若者の業界参入促す求人メディア

2024年12月25日 (水)

話題「運送・物流業を子どもたちの憧れの職業に」──。トラック運送に特化した求人サイト「ドラピタ」を運営するオーサムエージェント(名古屋市東区)は、壮大な目標を掲げている。3K(きつい・汚い・危険)ともいわれる運送・物流の現場を、子どもたちにどうアピールしていくのか。代表取締役社長の代田晴久氏、創業メンバーの市川遥南氏に、求人メディアとしての戦略を聞いた。

▲(左から)創業メンバーの市川氏、代田社長

充実の求人情報で、人材の発掘と定着を目指す

「ドラピタ」はトラックドライバーや倉庫作業員、配車スタッフ、事務職など、運送・物流にまつわる求人情報を掲載している。2017年から始まった同サイトはわずか7年で掲載原稿の累計が4万件、月間利用ユーザー数6万5000人を超える規模に成長した。今では業界最大級の求人メディアとして広く知られている。

▲わかりやすいインターフェースが特徴の「ドラピタ」

もっとも、ドラピタは決して順風満帆な成長を遂げてきたわけではない。創業当初、オーサムエージェントには運送・物流業界に詳しい人材がほとんどいなかった。そのため、積極的に物流現場に足を運び、業界の実情を把握する必要があったという。

創業メンバーの一人である市川氏は、「あの頃は物流に特化した求人サイトがなく、ものめずらしさから現場の方が興味を持ってくれた。現場の協力が得られたことで、ほかの求人サイトにはない専門性を獲得できた。現場の多大な助けがあったからこそ、今のドラピタがある」と振り返る。

現場の生の声を反映させたことで、求人票の質は大幅に向上した。現行のページを見れば分かるが、求人票にはトラックのサイズはもちろん、「ウイング車」や「パワーゲート」、「パレット輸送」といったニッチな項目も用意している。かゆいところに手が届く情報量の多さで、応募前からドライバーと事業者とのミスマッチを減らす。

求人サイトをつくり込むなかで、見えてきた業界の課題もある。物流業界では人手が足りず、採用活動がおろそかになっている企業が少なくない。そのためオーサムエージェントは定期的に採用支援を目的としたセミナーを開催している。採用のノウハウを物流企業向けにアレンジし、共有することで、業界全体の採用率向上につなげたい考えだ。

さらにホームページやパンフレットなど、採用に紐づくさまざまな商材の製作・販売、メディア運営も引き受ける。これらの機能提供には「新しい人材の発掘と定着」という一つの共通した軸がある。

運送・物流業界に若者を引き込むための施策

企業の採用活動を積極的に後押しするオーサムエージェントだが、それだけでは「運送・物流を子どもたちの憧れの職業に」という壮大な目標を達成するのは容易ではない。

代田氏は、運送・物流を憧れの職業に昇華するためには「この仕事の魅力を若者に伝える必要がある」と説く。業界全体で高齢化が進むなか、“若者を引き込むのは難しい”というのが一般論だが、同氏の見通しはまったく異なる。

「ドライバーや物流現場での働き方は、デジタルネイティブの若者にも合っている」(代田氏)。そう話す根拠はワークライフバランスを重視し、マイペースな働き方を好む、今どきの若者の考え方にある。運送や物流の仕事には「一人で黙々とする作業」が多く、対人関係に起因するストレスは少ない。働き方改革や残業規制によるドライバーの待遇改善も、若い労働力を確保したい運送・物流業界の追い風になっている。

オーサムエージェントはこうした業界の魅力を伝えるためのウェブメディア「ドラピタマガジン」(ドラマガ)も運営する。各社の取り組みや、現場のリアルな声を届けるまじめな記事から、グルメ・パワースポットを紹介するライトな読み物まで、提供するコンテンツは多種多様だ。現在は月2万5000人以上のユーザーが閲覧している。

ただし、課題もある。「まだ読者がコンテンツを楽しむ段階にとどまっており、他業界からの転職を促すにはさらなる工夫が必要」と市川氏。今後も、求職者の背中を押すようなコンテンツづくりを心掛け、さらにブラッシュアップを続ける方針だ。

業界特化型求人に求められる「伝える力」

オーサムエージェントには非会員制だった「ドラピタ」を会員制にする計画がある。

非会員制では、応募後の応募者と企業間のやり取りはメール、もしくは電話で行うしかない。しかし、会員制にすることで、ユーザーはマイページの企業管理画面にて、一括でやり取りができるようになる。さらにスカウトや人材紹介などの新機能を追加する構想もあり、今まで以上に企業と求職者をつなげることが可能になる。また、活発な相互コミュニケーションは応募率の向上につながり、企業からの働きかけは休眠ユーザーの掘り起こしにつながる。

応募代行サービス「ドラクル」もリリース予定だ。これは人事担当がいない中小企業を支援するために、応募受付や面接調整といった採用活動を代行するサービス。試験的に運用した企業では、同じ応募数で採用率が倍増したケースもあり、確かな手応えを感じている。

さらに今後は運送・物流業界の枠を超え、倉庫業や建設業、警備業といったほかの分野向けの特化型求人サイトも構築したい考えだ。「運送・物流業界の基盤を強化しつつ、新たな分野へ進出することで、人材不足という共通の社会課題に応えたい」(代田氏)。仕事の魅力を発掘し、それをマッチする求職者に周知していく。これからの業界特化型求人サイトには、そうした「伝える力」が求められている。そして魅力を正しく伝えることができれば、オーサムエージェントが掲げる「運送・物流業を子どもたちの憧れの職業に」という目標も、夢物語ではないのかもしれない。

一問一答

Q.スタートアップとして、貴社はどのステージにあるとお考えですか?

A. 当社は現在、創業期から拡大期に移行した段階にあると考えています。これまでベンチャー企業として挑戦を続けてきましたが、22年にプライム上場の株式会社じげんへのグループ入りをはたしました。上場企業グループという経営基盤の強化はもちろん、多数のM&Aを実施し、多様な経営ノウハウとマーケティングノウハウを持つじげんへのグループ入りを果たしたことで人的投資やシステム投資を積極的に進め、お客様満足度をさらに高めていくフェーズに入っています。

Q. 貴社の“出口戦略”、“将来像”についてお聞かせください。

A.まずは、物流業界専門の人材支援企業としお客様企業にとってなくてはならない存在になること。そして、物流業界で働く新たな求職者様を創出することを目指します。そのうえで、日本を代表する領域特化型HRカンパニーになること私たちの目指す将来像となります。

「オーサムエージェント」ホームページ